感想
いよいよ藤井猛四段の順位戦が始まる。並べる方も気合が入る。どうでもいいことだが、番勝負やリーグの最初の将棋が先手というのはなんとなく気分が良い。
藤井四段との共著ではないが、安西五段もまた『振り飛車党宣言』の著書の一人。ここまで並べていると藤井四段の居飛車も自然な選択に感じてくる。安西五段の三間飛車に藤井四段が穴熊に組んだ。
安西五段は中央志向。位負けしないように藤井四段も穴熊のハッチを閉めると、金はそのまま中央から反発した。玉が堅い分、先手に分があるような序盤に感じる。
駒がぶつかってから安西五段が7筋から手を作ったところ、☗5七金~☗5九角は何気ない手順だが、☗7八飛の味があり上手さがある。後手の玉形の薄さを突いている。本譜も☗2五桂から☗2五飛~☗7五飛を実現させた。居飛車ながら飛車を振り回し、なんとなく振り飛車党っぽさを感じさせる。
ただし、ここからの攻めの繋ぎ方はあまりにもテクニカルだった。飛車も角も当たりが強いのでうっかりするとすぐに抑え込まれてしまいそう。☖7四金(84手目)の局面は図にも掲載されており、いかにも「次の一手」が出るところだと感じたが、難しい。☗7四飛~☗4一角では☖7六桂くらいですぐ負けになってしまうし、☗6四歩もハッキリしない。本譜の☗6四銀!は見えなかった。
7三に利く駒で繋ぐのが良く、これで攻めが繋がっている。見事な攻めだった。
穴熊の遠さを活かし、玉頭から巧みに攻めを繋げ切った素晴らしい順位戦デビューだった。
評価値
藤井四段の快勝譜と言えそうだ。玉頭攻めが始まってからはずっと勝勢で、やはり見事に攻め切った将棋と言えると思う。
参考文献
- 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)
棋戦情報
第50回期順位戦C級2組(主催:毎日新聞社、日本将棋連盟)