1991/6/28 藤井猛四段—堀口弘治五段(新人王戦)

感想

堀口五段には4月にも対戦しており、早くも2戦目。前回負けであったためリベンジ戦となる。

本局は藤井四段の三間飛車に堀口五段の天守閣美濃。四間飛車ではなく三間飛車のため、対左美濃藤井システムとは異なる将棋になるはずである。藤井四段がどのように序盤を展開するか非常に楽しみな形だ。

まず☖3一角に☗7五歩が三間飛車を活かしたうまい手。☗7五歩と☗6五歩を突いた石田流に組め、☗4八角とあわせて捌きやすい形になった。とは言え、単純な飛車交換では後手に分があるため簡単ではない。そこで藤井四段は☗6六銀も合わせて圧力をかけた。

こういう銀はうっかりすると重いだけ、あるいは遊びがちになってしまうが、この銀が終盤で上手く活用される。堀口五段は☖6四歩と反発したが、藤井四段が待ち構えていたところだったように思う。☗7七桂まで跳ねて圧力は最高潮に達した。

角の利きから逸らすように☖9四飛としたのに対し、ここからの藤井四段の捌きが見事だった。まず☗9六歩!

それから圧力を開放するかのように次々と歩を突き捨て、☗7四飛までいくと教科書のように飛車が捌けた形である。流れる様な捌きだった。桂馬を入手することに成功し、☗3五歩とやはり玉頭から攻めかかった。本局の場合☗2六桂が狙いになるため、安易に☗2六歩としなかったことがここで分かる。玉頭攻めを真正面から受けられたが、代わりにと金を作ることができた。

終盤の玉頭攻めもド迫力。☖2四桂を打たせて☗2六歩もスリリングだが効果的だった。玉頭の歩であるが、自陣の危険度を完全に見切っていた。☗2五歩の垂れ歩と合わせて☗4四銀の強手が決め手になった。

この銀は初期配置の左銀が上がってきたものである。美しい。最後は長手数の詰みに討ち取りリベンジ成功を果たした。

圧力をかけていくような序盤から、それを一気に解放した中盤、そして緩むことなく攻め切った終盤まで見ごたえある藤井将棋だった。力強い将棋でもあり、美しい駒運びでもあった。お気に入りの将棋の一つ。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.1/1手15秒)

やはり一度も後手に振れることなく勝ち切った、藤井四段の快勝譜だったと言えると思う。☖2四桂☗2六歩☖3六桂でぐんぐん先手に振れていっているのが面白い。玉頭の歩を突き、王手角取りを掛けられる形だが、藤井四段の見切りが正確であることを示している。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第22期新人王戦本戦(主催:赤旗、日本将棋連盟)