1994/1/18 平藤眞吾四段—藤井猛四段(順位戦)

感想

東西分かれているが平藤眞吾四段とは早くも4戦目。順位戦で当たるのは初めて。

順位戦は残り3局。ここまでの順位戦成績は藤井四段が6勝1敗、平藤四段が5勝2敗。四段昇段同期、好成績同士の対局、お互いに気合が入った対局だったと思う。

その初手、平藤四段は☗9六歩!だった。これまでの将棋は相居飛車や通常の対抗形だったが、本局は早くも力戦になりそうな気配がする。7手目☗5六歩も早く、玉頭から盛り上がるような形を目指しているような感じもする。藤井四段は何かを察知してか三間飛車に構え、それを見て平藤四段は2筋を伸ばして居飛車にした。しかし、左銀を☗5七まで持っていき、やはり飛車を振る余地を残している。平藤四段が究極の柔軟性を見せている一方、藤井四段も石田流にして単に抑え込まれるような形を回避した。序盤から面白い。

☗7五歩を見ていよいよ相振り飛車になるかと思ったが、それすらも見せ球で平藤四段は右玉のような、棒金のような形にした。藤井四段が3筋を抑えているので平藤四段は飛車を横に使いづらい形。後手の飛車を抑え込みに行く方針に決まったようだ。☗7五歩は将来のこびん攻めを見せているということだと思う。

☖3三桂を跳ねた石田流、棒金で抑え込まれてはいけない。平藤四段は7筋の歩を突き捨てて後手の銀を引かせ、1筋、3筋も突き捨ていよいよ銀を盛り上げてきた。平藤四段の仕掛けは後手の美濃囲い一歩手前(☖7二銀が入っていない)でタイミングが良い。しかし冷静に42手目☖3五歩と押さえ、☗3五同銀なら☖同角☗同金☖同飛で角と金銀の2枚替え。先手玉頭が戦場でもありこれは後手が良い。平藤四段はここは銀を引くしかない。

藤井四段は一手の猶予を得たが、☖7二銀とすると☗3八飛で再度抑え込みに入られる。藤井四段はここで☖2四歩と思いがけないところから反発した。1筋の突き捨てがあるのでいかにも☖1三の角頭が弱い。平藤四段は66分考え☗1五香と走ったが、捌き合い後の局面である67手目は、飛車銀交換で先手が駒得ながら先手玉周辺が焼け野原になっており後手が大優勢と思う。

とは言え、☗2一飛は☖2八とと☖6一金の両取りで、☖7二銀が入っていない美濃囲いの弱点を突かれている。ここで☖4三歩が凄まじい手だった。

両取り逃げるべからずと言っても、素人は☖3八飛~☖7二銀としてしまいそうだが、☖3八飛には☗4七玉と頑張る手があり、そこで☖7二銀としても☗4九金で飛車取りが受からない。良さそうに見えても罠がはられている。しかし本譜☖4三歩も☗6一飛成と急所の金を取られてしまうが(しかも☖5二の金取り)、そこで☖6二金と寄っておけば飛車角両取りという算段だ。☗6一飛成☖6二金☗4三馬☖6一金☗同馬の進行は、☖4九飛から詰む。☖4三歩には感動した。

平藤四段は結局☗6一飛成とせずに角を逃げたが、そこで☖3八飛とし、悠々桂馬を拾って先手玉を仕留めた。☗6一飛成はいつでも☖6二金が逆先で怖くないということだった。

またも充実した内容で順位戦勝利。1敗勢が多いが、勝ち続けてチャンスを待つ。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

藤井四段作戦勝ち~勝利という流れだったと思う。44手目☖2四歩の反発も成功しており、対抑え込み系の将棋の会心譜だと思う。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第52期順位戦C級2組(主催:毎日新聞社、日本将棋連盟)