1992/9/24 田丸昇八段—藤井猛四段(王位戦)

感想

田丸昇八段との一戦。藤井四段の第34期王位戦初戦である。

3~4手目に9筋の交換が入ったのが珍しい。ここに何かしらのアヤがあったか、本局は相矢倉に進んだ。相矢倉と言ってもお互いに玉頭に厚みを築き、長い戦いになりそうな予感がある。

序盤少し面白かったのが、角の睨みを避けつつ、あわよくば端から殺到する先手の攻めの布陣に対し、☖2四歩とした藤井四段の手。

この歩は先手の角の利きにある手だが、☗同角は☖3五歩から角を取れそう。この歩を取れなければ☖2三金等ができるので、先手からの端攻めが怖くなくなる。☗3七銀の働きがいまいちで、後手がうまくやっているのではないかと思った。

ただ、71手目☗5七角までくると、後手の飛車が狙われているようで気持ち悪くなってきた。ここで藤井四段から仕掛け、ついに本格的な戦いが始まった。仕掛けさせられたような感じに見えたのが不安だが、それでも8四の飛車が5四→5五→2五→6五!とダイナミックに動く様には振り飛車党の血が流れている。

96手目の局面は金損。駒の働きは藤井四段の方が良さそうだが、総合的には先手の方が良いと思う。

とにかく藤井四段は☖8四桂の一手に期待している。実際にこの桂馬が入った後、114手目☖7六桂と王手飛車取りを掛けることができたが、☗4一角の一手で後手玉への詰めろがほどけなくなっていた。

後手玉への攻めと言えば遊び駒を使った☗3五銀のぶつけと☗4一角だけだった。駒得を主張して十分に受けながら必要最低限の攻めで勝つ田丸八段の距離感の測り方が見事だった。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

後手が良さそう→逆転という流れは合っていたが、本格的に戦いが始まったところは後手の方が良かった。金損でも藤井四段の方が良かったということで、藤井四段の大局観が見事だったということになる。逆転のポイントはもっと後で、銀を渡したために後手玉への詰めろが発生したのが大きかったようだ。☖7三桂を活用し味が良いと思ったが……。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第34期王位戦予選(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)