感想
脇謙二七段との戦い。脇七段とは初手合いで、関西将棋会館での対局。高槻の新関西将棋会館もいよいよ完成し、福島の関西将棋会館での対局はもうすぐ歴史の中だけの世界になってしまう。一抹の寂しさは拭えないが、高槻の盛り上がりを見ていると嬉しさや頼もしさを感じる。
順位戦成績はここまで両者3勝2敗。昇級戦線に残れるかどうか。
戦型は藤井六段の四間飛車に脇七段の☗5七銀左急戦。藤井六段は☖4一金型四間飛車であり、対急戦を意識している。さらに☖5四歩型の構えを取った。脇七段はまとまった時間を使うことなく真っ向から仕掛けていった。
☗3五歩~☗4六銀の仕掛けを見て既視感のある将棋だと思ったが、これは『四間飛車の急所 第4巻』第2部第2例の将棋だった。第1例では☖6四歩型、第2例では☖5四歩型の実戦例を取り上げ、その形を比較しながら解説されている。藤井九段の棋書はこういった細かな違いを比較しながら詳細に解説しているので分かりやすいし、記憶に残りやすい。
50手目☖9九銀が目新しい手。
☖3二金と指さなかった理由が『四間飛車の急所 第4巻』に書いてあり、ここにも藤井六段の☖5四歩型に対する意識が現れている。藤井九段はよく☖5四歩型の薄さについて言及されている気がする。
対する☗7九銀はいかにも良い手で、☖8九馬~☖7七桂の狙い筋はあるが、それで攻め倒せる感じも無く、並べているときはこれで一気に攻めが細くなったように見えた。しかし52手目☖3二金と手を戻しておけば十分だったようだ。ただここで☖3二金とするなら☖9九銀は打たないだろうと思ったが、解説を読むと☖9九銀には将来的に☗9九香で馬を捕獲される筋を消して確実に攻める意味もあったようだ。ところが実際は急いで攻めて行くしかなくなっていた。52手目☖5二金左としたことによりと金攻めが厳しくなっているのが要因で、だから「☖5二金左が敗着」という結論になる。面白い。
この後☖8九馬~☖7七桂が実戦でも現れ、☖9八飛~☖8八銀成としたところは☖9九銀の顔も立ち意外と厳しい攻めにも見えたが、銀2枚で守られた玉が寄らない。69手目☗4八金の局面になると後手攻めが一拍空くことが明確になった。つまり、先手からと金を絡めた攻めがやってくる。
藤井六段は緊急手段で金でと金を払い、先手の攻めを緩和しながら後手玉に迫っていくが、先手玉はどうしても寄らない。後手玉は横からも縦からも攻められることになり、最後は即詰みに討ち取られた。順
位戦無念の3敗目。ただしまだ25歳の藤井六段、心が腐ることがなかった。
評価値
参考文献
- 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)
棋戦情報
第54期順位戦B級2組(主催:毎日新聞社、日本将棋連盟)