感想
酒井順吉六段との一戦。
この将棋は何かの機会に再放送を見た記憶がある。藤井四段の鋭い眼光と神吉宏充七段の解説が印象に残っている。
戦型は藤井四段の四間飛車に酒井六段の天守閣美濃。当時としてはお馴染みの戦型になった。
本局の藤井四段の作戦はちょっと面白かった。玉頭の歩と左銀の活用を優先し、敢えて4筋の位を取らず、4五の地点を争点にした。この時「上手い」と思うのは、☗6四歩からの歩交換と☗4五歩の仕掛け二つの狙いがあるため、☖4三金と備えることができないということだった。駒組の段階で既に藤井四段が一本取っているように見える。感想戦を見ても藤井四段の研究範囲と思わされた。
本譜の反発もおそらくは想定通りで、図にもある42手目の歩打ちは参考になった。通常は☗8二飛成とできなくなるため損になるが、本局は☗5五銀に紐をつける意味がある。
中盤は天守閣美濃に二枚飛車。これも通常は三段玉の形が遠く、二枚飛車が有効になりにくいこともあるが、本局は☖6三の角が質駒になっていること、☖3三銀がいなくなっているため振り飛車にとって都合が良い。そういう局面にした藤井四段の将棋の作りが素晴らしい。
そして56手目の底歩に対し、57手目の歩が一閃。手堅く打ったはずの底歩だったが、それを上回る歩打ちがあった。処置のしようがなく、ほとんど決め手と言って良いと思う。とにかく☖6三角が王手で取れる形になっているのが大きい。神吉七段は酒井六段はこの歩打ちを見落としたのではないかと解説していた記憶がある。
以降も緩みなく寄せ切った。藤井四段、圧巻の将棋だった。
評価値
中盤、意外と若干後手に振れているが、主導権は先手にあり、断然先手が勝ちやすい将棋だと思う。
参考文献
- 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)
棋戦情報
第2期銀河戦Cブロック(主催:サテライトカルチャージャパン)