感想
平藤眞吾四段は藤井四段と同じ時に四段昇段した棋士。所属は関東と関西に分かれていたが、四段昇段同期ということで少し意識するところがあっただろうか。
本局も藤井四段は自主的に居飛車を選択した。これで3局連続居飛車だ。しかも本局は早囲い系ではなくじっくり囲い合う相矢倉となった。
中盤、お互いに飛車を中央に持っていき、中央の熱が上がっていった。こうなると後手玉は戦場に近いので先手が上手くやれそうだが、その分後手は右銀や右桂を活用できており先手玉へ攻める準備ができている。一気に大戦争とするのではなく、少し収めてから藤井四段も右銀と右桂を活用した。
これで局面は相矢倉らしい全面戦争となった。先手の守りの銀は☗9五銀と追いやられたが、61手目☗8三銀!との組み合わせが抜群で少なくとも飛車を取れる形にした。飛車の取り合いは先手に分がある。69手目☗7九歩と底歩を打ったところは少し先手が良いと思う。
78手目☖9五歩の局面は☖7三桂と☖5三角と先手玉への攻め駒を2枚取ったことで先手玉の脅威はかなり緩和できた印象だ。とはいえ☖8七歩成の爆弾が残っているので決して油断はできない。藤井四段はそうした不安を取り除きつつ後手玉に迫る攻防の角を放った。79手目☗5四角。☗3六銀にも紐がついており四方八方に利く名角が出た。
平藤四段は86手目☖6六銀と強手を繰り出したが、手抜けば☖6七銀~☖6八飛成まであと2手ある。速度計算しやすい形でいかにも藤井四段好みの局面。☗2五桂と攻め合った。平藤四段はさらに竜を捨てて☗5四角の利きを逸らして☖6七銀不成と入る非常手段に出たが、再度の☗5四角が攻防でぴったり。盤上に名角が舞っている。
☖6八銀不成は形作り。藤井四段はきれいに寄せた。☗5四角があまりにも印象的な一局だった。この対局に勝利したことで藤井四段は竜王戦5組昇級を決めた。
これで1991年度の対局が終了。31勝11敗(0.738)という好成績を挙げた。自戦記編第1局には藤井新四段の目標は(控えめに言って)「年間30勝」であったが、見事に成し遂げた。
評価値
全然正しい形勢判断ができない。61手目☗8三銀の局面は1000点程度後手に振れていた。さらに79手目☗5四角のところも若干後手に振れており、その後大きく後手に振れた。☖6六銀が疑問だったようだが全然分からなかった。せっかく棋譜があるにも関わらず、棋士が自信をもって指した手なのか勝負手だったのか全然判断がつかない。もっと正確な形勢判断ができるようになりたい。
参考文献
- 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)
- 『将棋世界』2001年3月号付録『藤井ブック 藤井システム・次の一手』
棋戦情報
第5期竜王戦ランキング戦6組(主催:読売新聞社、日本将棋連盟)