感想
阿部隆五段との一戦。
戦型は藤井四段の四間飛車に阿部五段の居飛車穴熊。藤井四段の先手四間飛車採用率がぐんと上がってきた気がする。
図にもあるように23手目☗5六銀が早い印象。一見積極的だが、25手目に☗4五歩とはできなかった。☗1六歩が入っている場合は☗1七桂の応援もありそうだが、銀単騎ではそう上手く行かないか。『四間飛車の急所 第1巻』によると、現在では攻めが無い場合は早い段階で手詰まりになりやすいとされている。☗5六銀型は昔からある指し方だが、1992年度における認識はどうだったのだろうか。
実戦はしっかり居飛車穴熊に組まれることになった。そして☖7二飛☗6六角☖8二飛☗7七角という、よくありそうな千日手になった。後手四間飛車の場合ならともかく、先手四間飛車でのこの変化は不満という印象がある。しかし☗6五歩と突かないと、それこそ☖7二飛から一歩交換が受からない。よく考えると泉正樹六段(1991/5/30・早指し選手権戦)でもこの変化になり得たのだろうか。
藤井四段に何か誤算があって、千日手もやむ無しと判断したかもしれない。この2か月で千日手は3回目。駒がぶつかる前の千日手は藤井四段にしては珍しく、本局の千日手は藤井四段の本意では無いと思う。
評価値
参考文献
- 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)
棋戦情報
第23期新人王戦本戦(主催:赤旗、日本将棋連盟)