感想
勝浦修九段との順位戦。順位戦成績はお互い2勝2敗。過去の対戦成績は藤井六段の1勝2敗。
過去の対戦では勝浦九段が色々な戦型を指しているが、本局も角道を開けずに☖5三銀左急戦に構える工夫を見せた。結局24手目に角道を開けたが、序盤からちょっとした緊張感が漂っていた。
藤井六段も☗6九金の態度を保留していたが、先手番ということもあり普通に本美濃にした。後手はすぐに仕掛けず先手の最善形を崩す構え。藤井六段は☗9六歩も☗9八香も指さず☗4六歩とした。端歩の違いはあるが、これは米長邦雄九段戦(1992/9/8・全日プロ)以来久々の採用だ。さらに31手目☗3六歩。今の定跡に慣れていると☗9八香と指してみたいが、じっと陣形を膨らませるのは大山十五世名人時代の印象がある。
32手目☖7六歩からは四間飛車対左銀急戦の最も基本的な定跡手順。非常に有名な手順だが、この手順を公式戦でみかけることはほとんどない。47手目☗5八銀もこの一手に思えるが68分も費やしている。☖9九飛成に☗1一角成☖2二銀☗1二馬☖1一香で馬が死んでしまうが、それで振り飛車が悪いとは思えない。その先、どのようにリードを広げていくかを考えていたのだと思う。
藤井六段の出した答えは☗7六香。一見難しいが☗7二香成~☗8一成香とぼちぼち駒を拾っていき、拾った桂馬で☗2六桂~☗6一角の攻め筋を見た。この間先手陣が寄るかどうかも考える必要がある。☖6七飛成~☖4八金の筋は☗6六角があるので問題なし。本譜のように☖7六歩~☖7八飛成の二枚飛車も☗6九歩の底歩がしっかりしている。概ね藤井六段の読み筋通りにリードが広がっているように感じた。
72手目☖8七竜は仕方がないとは言え竜の働きが非常に悪くなる。藤井六段は手に乗って金を前に繰り出し、最後は☗5四銀の妙手で決めた。
☖同金は☗3四桂☖1二玉☗4二桂成から☗4三馬とした手が☖5四金~☖8七竜を睨んでおり、後手の形の悪さを突いている。
対左銀急戦快勝譜。☗9九香☗9八香の違い、☗3六歩の有無によって損な変化もあったはずだがそれを感じさせない将棋だった。
評価値
参考文献
- 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)
棋戦情報
第54期順位戦B級2組(主催:毎日新聞社、日本将棋連盟)