1993/11/19 岡崎洋四段—藤井猛四段(新人王戦)

感想

岡崎洋四段との一戦。

序盤、藤井四段の四間飛車に岡崎四段は☗5七銀左急戦を見せた。藤井四段は☖4一金型四間飛車に☖6四歩型を示し、この形の貴重な実戦例が見られるかと思ったが、岡崎四段が☗4五歩早仕掛けなのか棒銀なのかなかなか仕掛けの態度を表さなかったため、通常の☖5二金型四間飛車に合流した。そして岡崎四段もそれを見て☗3七銀と棒銀を明示した。結局、34手目は『四間飛車の急所 第3巻』にも同一局面が掲載されている定跡形になった。

ただしこの☖6五歩型はあまり実戦で見ることはなく、これはこれで貴重な実戦例だ。

本譜は44手目☖3四銀まで『四間飛車の急所 第3巻』にも記載がある進行。ただし、その定跡手順に比べ、岡崎四段は☗2四歩☖同歩と味付けした。この将棋の中盤の見どころは、藤井四段がこの突き捨てを最大限に咎めたところにある。46手目☖2五歩~☖2六歩がその手順。結果図とも言えるような58手目☖3七角成の局面は☖6五歩型の弱点である☗6四桂を防いでもおり、後手全く不満の無い展開だと思う。

しかし69手目☗3七銀まで進んでみると馬が捕獲されており、激戦に思えてきた。後手玉には全く手がついておらず先手の☗6九飛が使えていないため、実際には後手が少し良いはずだが、ハッキリしている感じではない。端を詰められ、☗3一竜も入られ、徐々に後手陣も怖い形になってきた。

105手目☗6二銀は通常受けがない詰めろ。既に一分将棋に入った藤井四段だったが、☖7九金から飛車を取りにいった。

☖7九金☗同飛☖同角成☗同玉の局面は飛車だけでは一見詰まないが☖4六馬から詰む。そのため☖7九同角成に☗7七玉と逃げるしかなかったが、☖4四馬が王手銀取り。9手かけて銀を抜くことに成功し、ピンチの局面を見事に脱出した。

この過程で先手玉は中段を泳ぎ、捕まりづらい形になったとも思ったが、藤井四段は的確に追い回し、最後は必至をかけて決めた。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

概ね実感通りで、後手が良さそうだがハッキリしないような形勢が長く続いていた。ただ、まず後手が良さそうな局面を作っている点で、この将棋は並べる価値があるし、この定跡を覚える価値もある。100手目近辺では形勢も大きく揺れ動いていたようだが、☗6二銀で大きく後手に振れた。この銀を抜いた藤井四段の指し回しが見事だった。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第25期新人王戦本戦(主催:赤旗、日本将棋連盟)