1993/6/10 藤井猛四段—小林宏五段(新人王戦)

感想

小林宏五段との一戦

戦型は小林五段の左美濃に、藤井四段は☗6六銀型四間飛車。こってりした戦型であるが、藤井四段は☖1五歩を許し、中央の手を優先してスピーディーな将棋にしようとしている。ただ、「高美濃には☗2六歩が必要」とは最近よく聞く藤井語録だが、本局はその☗2六歩も入っていない。これが後々影響することがあるかどうか気になった。

藤井四段は思惑通り中央から仕掛け、銀損の代償に左右両方の桂を捌き、さらにはと金を作った。

勢いは物凄いものがあるが、☖7七歩成も大きな手で、飛車の活用が見込めなくなる。先手はやりたいことができたように思うが、後手の左美濃を崩して寄せ切るのも大変そうに見える。

63手目☗4八飛の瞬間に☖1六歩が鋭い手。まさかここでこの端歩が厳しい手になるとは思わなかった。

ここで☗2六歩が入っていないデメリットを突かれた形になり、「高美濃には☗2六歩が必要」という藤井語録の説得力がますます上がった。

端を対応しきれない藤井四段は☗6二角と勝負手を放ったが、☗4四角成は先手を取って受けられてしまうのが泣き所で、馬を逃げるとその間に寄せられてしまいそうだ。そこで☗6二角の後に☗4一成桂としたが、冷静に☖4三歩と受けられ銀が取れなくなってしまった。この辺りは非常に苦しさを感じた。それでも☗5一角成から角を使おうとしたところに藤井四段の執念があった。

最後はぴったり1枚足りない形で投了。1筋~2筋のメリットを最大限に活用した小林五段が上手かった。振り飛車党としてはこういう端攻めを喰らってはいけないと勉強になった。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

☖7七歩成の局面はやや後手が良いという数字になっている。ここで苦しいと言われるとつらいものがあるが、藤井四段がこういう将棋を実戦で経験したということに意義があるし、ファンとしても実戦例が残っていることに意義を感じる。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第24期新人王戦本戦(主催:赤旗、日本将棋連盟)