1995/3/1 宮坂幸雄八段—藤井猛五段(NHK杯)

感想

宮坂幸雄八段との戦い。過去藤井五段の1戦1勝。

戦型は藤井五段の四間飛車に宮坂八段の5筋位取り。27手目☗6五歩の局面はつい最近の佐藤秀司五段戦(1995/1/24・王将戦)と同一局面。☖6二飛と迎え撃って藤井五段が優位を築いたが、逆転負けしてしまった。本局は☖6二飛ではなく☖6五歩☗同銀☖6四歩と穏やかに対応し、☖3五歩と3筋の位を取った。

☖6二飛は手筋だが、将棋はそれだけが全てではない。先手の5筋の位に対し、後手は3筋に位を張ってバランスを取ろうとしている。

お互い手が出しづらい将棋であり、振り飛車は銀冠に、居飛車は中央に手厚い陣形を作った。藤井五段は銀冠からさらに☖8五歩とのばし、☖8四角のスペースを作ったのがポイント。先後ともじりじりと細かく角を微調整する手が続いたが、60手目☖1三香は間合いを図った手。

☗1七角の瞬間に☖8四角が☖6二角成を見せて嫌みな手になり、☗6六歩と打たせてポイントを挙げた。

65手目☗3四歩から局面がほぐれていく。対して☖1五歩☗同歩☖同角としたが、☗3五角が痛いカウンターに見える。しかし当然読み筋通りで、☖3四銀が角に当たり大駒を攻められる形になっている。☖3五歩~☖1五歩と飛車を押さえて☖1三桂と香を取り返すことができた。☖1三香は間合いを図った手に見えて、こうした展開も見据えていたのだろうか。達人の指し回しだ。続いて☗3七桂(馬取り)~☗4五桂は気持ち良いカウンター。華々しい応酬が続いた。

しかし、気持ち良い駒運びと思った桂跳ねも、☖4五同銀とあっさり取って、☗同銀直に☖4一香が痛打。☗5六銀をどかして☖6五歩と先手陣にパンチが入る格好になった。玉が7八にいるのでなお厳しい。宮坂八段は☗5七銀と頑強に受けるが、桂馬を犠牲にと金を作り、104手目☖6六歩まで綺麗に攻めを繋げた。

この後数手続くがこれで勝負あり。

☖8五歩~☖8四角という余地を作って具体的にポイントを稼いだこと、☖1三香と間合いを図りつつ後の捌き合いに備えた手が出たこと、華々しい応酬の後一切の緩みなく寄せたこと、序盤から終盤まで藤井五段のペースで勝ち切った将棋だった。完勝譜。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

やはり藤井五段はリードの広げ方が見事。評価値が1000点程度の差だとしても、振り飛車の方が勝ちやすく分かりやすい形を作っているということだ。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第45回NHK杯争奪戦予選(主催:NHK、日本将棋連盟)