1993/5/25 青木清五段—藤井猛四段(竜王戦)

感想

青木清五段との戦い。青木五段とはこの一局のみ。最近、訃報が発表された。

戦型は藤井四段の四間飛車に、青木五段の左銀急戦。藤井四段の構えは☖5四歩型で、既に懐かしい雰囲気。しかし青木五段は☗7七角と上がったりして仕掛けのタイミングを遅らせ、後手は☖1二香と☖4三銀も入った。そしてこの☖4三銀を見て☗4六歩~☗4五歩と仕掛ける態度を明らかにした。特に☖1二香の形は☗2三角と打ち込んだ時に先手にとって得になるような変化もある。そこで藤井四段は☖2四同角の形にしたが、青木五段がこの変化に持ち込みたかったということかもしれない。

☗4三歩~☗2四飛~☗3二角は懐かしい定跡。振り飛車の☖4一飛打という自陣飛車が好手で振り飛車良しが定跡だったが、☗9五歩の郷田新手が出て振り飛車が避けるようになったため、現代この局面が現れることは無い。

しかし本局、藤井四段は99分の時間を投入し、☖4一飛打ではなく☖7三桂と跳ねた。

よく見ると☖4一飛打には☗4四角という手がある。☖同飛なら☗1二馬、☖2一飛なら☗3三角成で先手の攻めが続く。ここにも☖1二香型の弊害があった。しかし代わりの手が☖7三桂というのが良い。序盤の☗7七角を何とか咎める順がないかと探っていたと思われる。これだから藤井将棋は面白い。

☖7三桂は☗5七銀との交換を果たしたが、攻め切れるほどの駒は無いので、必然的に青木五段の動きに乗じて反撃するチャンスを狙うことになる。青木五段も☗6九銀と徹底的に自陣の憂いをなくそうとしたところ、藤井四段の☖2七角~☖6三角成が素晴らしく、後手陣は非常に手厚くなった。この後手陣は飛車角だけでは攻められないどころか、と金が1枚できたところでびくともしない。馬、そして銀を引き付けたことで、先手の攻めを切れ模様にした。

そして前局に引き続き、本局も☖9三歩から端を逆襲する筋が出た。前局は☖9四歩からの地獄突きだったが、本局はさらに一段深い☖9三歩からの反撃。☗6九銀が壁になっているため端攻めがより有効になっている。

さらに☖7五歩が絶品の歩突き。☖6三馬の自陣馬を攻めにも活用し、端と玉頭を睨んだ。後手も攻め駒が豊富という訳では無かったが、端と自陣馬で手にしてしまった。最後は玉頭から殺到し、浮いた☗6九銀を召し取って勝ち。振り飛車の勝ち方としてお手本になるような将棋だった。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

お互いに攻め駒が不足していたため手数は長くなったが、藤井四段の差の広げ方が素晴らしかった。完勝と言って良いと思う。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第6期竜王戦昇級者決定戦5組(主催:読売新聞社、日本将棋連盟)