感想
北浜健介四段と初対戦。北浜四段は藤井六段の5歳年下だが、四段昇段は藤井六段の3年後、18歳でデビューを決めた。新進気鋭の若手同士の対決、という構図だ。
戦型は藤井六段の四間飛車に、北浜四段の居飛車穴熊模様。☖8五歩も☖5三銀も入れずに☖3三角~☖2二玉を急ぎ、一目散に穴熊を目指していく。藤井六段は☖2二玉の瞬間に☗6五歩。

☗3三角成☖同桂となれば穴熊は防げるし、☗6四歩の捌きも狙い、☖8五歩には☗7七銀が間に合う。☖3三同桂の形は、☖1二香が入っていないので左美濃に移行しやすいが、その場合は☗1五歩の位が活きてくる。この駒の位置関係において☗6五歩は狙いすました一着に見える。
北浜四段は☗3三角成を甘受し、玉頭の厚みを築いていく方針にスイッチ。藤井六段は☗7八金~☗6六飛から浮き飛車に構え、☗7六飛~☗7四歩と軽く捌いていく方針かと思ったが、☗7六飛には☖9六角があるため安住の地にならない。これは逆に北浜四段が☖8五歩を保留していたのが活きている。☗6八金~☗7九銀~☗7八角という手順は苦心の組み換えというように感じられる。

しかし☗7八角は☗3四角の飛び出しや☖5五銀の銀ばさみを狙っており、手をこまねいているだけではない。
☖8五歩と突かないことには後手の飛車も働かないので結局☖8五歩型になり、☗7六飛と寄ることができた。それでも50手目☖9四角と設置。☖8六歩から☖4七歩成☗同銀☖4九角成と、飛車ではなく金の方を狙っている。そこで☗5八金寄。

苦心の組み換えと思われた☗6八金を活かした印象的な一手だった。
53手目☗5六歩で銀ばさみを敢行したが、☖8六歩から飛車交換になって☖6六銀が銀を逃がしながら桂取り。そこで☗8五桂が気持ちの良い一手になった。☖9四角が相当働かない形になり、飛車の打ち込みも後手陣の方が隙が多く、ここは藤井六段が良くなったように思う。
66手目☖3六歩で玉頭の圧力が物凄いが、☗4八金上で4七の地点に利きを増やして受けたのが冷静。74手目☖3五歩で銀が死んでいるが、☗2六桂の切り返しが厳しい。83手目☗3七歩も☗4八金上を活かしている。そうして玉を押し返して、☗3四銀~☗6一竜は気持ちの良い決め手。結局☖9四角は働かなかった。
評価値

概ね印象通りの形だったが、☗8五桂の局面はまだ互角。☖5五銀と引かせることができて先手良しがハッキリしたようだ。
参考文献
- 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)
棋戦情報
第22期棋王戦(主催:共同通信社と観戦記掲載の21新聞社、日本将棋連盟)