感想
大島映二六段との一戦。大島映二六段は私が指導対局を受けたことがある数少ない棋士の一人で、こうして棋譜を並べることができるのは嬉しい限り。
戦型は藤井四段の四間飛車に大島六段の居飛車穴熊。前局に続き居飛車穴熊との戦いとなった。藤井四段の作戦は1992/2/7の先崎五段戦(棋王戦)でも採用した早めに☖7三桂と跳ねる形。早めに☗6六歩を強要し、じっくり駒組みを進める序盤となった。
途中で大島六段は7筋に飛車を振り一歩交換を果たした。前局の深浦四段戦を嫌でも思い出してしまう。当然、本局では☖7五歩と逆襲することはしなかった。
仕掛けるとすれば一歩を持つ先手だが、お互い手を出しづらい将棋になり、今回は千日手になるかと思われた。ところが111手目にようやく先手が仕掛けた。香車を犠牲にする仕掛けであり、☖7五香の反撃があるため、☗7六銀の形ではなく☗8七銀の形である102手目の方が条件が良さそうに思える。そういう意味で意表を突く仕掛けだった。
仕掛けが成立しているかどうかは難しいが、133手目☗2二とまで進んでみると、少なくとも先手に不満はなさそうに見える。穴熊が遠い。そして☗3七角の利きが余りにも厳しく、☖9二香☖9一飛の形で結局端攻めを行えなかったところに後手のつらさを感じる。
居飛車穴熊相手に2局連続で長手数の敗戦。難しいところもあったと思うが、並べていて居飛車穴熊の実戦的な勝ちやすさを改めて思い知らされた。
評価値
将棋ソフト的には仕掛けはやや無理という判断だが、実戦的には難しい勝負と思う。差が開いていったのは140手目☖6五歩☗4五歩のところで、角が照射するようになって先手が良くなったようだ。
参考文献
- 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)
棋戦情報
第26回早指し選手権戦本戦(主催:テレビ東京)