1992/6/1 深浦康市四段—藤井猛四段(竜王戦)

感想

深浦康市四段との一戦。両者四段になってからは初めての対局となる。竜王戦ランキング戦6組決勝という舞台で対戦することになった。藤井四段にとって初の決勝。本局は自戦解説編掲載局である。

戦型は藤井四段の四間飛車に深浦四段の居飛車穴熊。序盤、☖3二銀型で高美濃に組むのが藤井四段の新構想だったようだ。今では当然のように存在する形も藤井四段らが研究し、披露し、下地を固めてきた。『藤井猛全局集』にはその過程の一部が収められている。

深浦四段が☗7八飛から一歩交換し、その間に藤井四段も駒組みを進め、☖4四銀型+銀冠まで組めた。その後☖5三銀~☖6二銀と引き締めて藤井四段得意の形になった。しかし本局においては手得を活かせておらず消極的だったようだ。

深浦四段も右銀を穴熊にくっつけ、藤井四段は☖7五歩から厚みを目指した。固さと厚みの戦いになると思いきや、深浦四段は再度☗7八飛と振って7筋から逆襲してきた。藤井四段の理想を許さない強情さを感じる。結局7五の地点は先手が制圧した。

その後は深浦四段が上手く進めているように見えたが、藤井四段も馬を作ったり、端攻めをしたり、勝負としてはまだどうなるか分からない。ただ、奪われた金銀を☗8六銀や☗8九金と囲いの補強に使われて深浦将棋の腰の重さが現れている。とても攻め倒せる感じではない。

並べている間はもしかしたら攻めが続くかもという感じもあったが、受け駒として使われた桂香が後手陣に刺さり、攻めの反動が目に見える形で盤上に現れた。腰も重たいが、受けの反発力も強い。ただ164手目☖8八歩の代わりに☖7七桂不成とすれば勝負形だったようだ。最後は先手玉を追いかけたが詰まず、投了となった。

深浦四段の居飛車穴熊が手強い。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

先手が良い時間が長かった。深浦四段が藤井四段の攻めを全力で受け止めようとしたことが分かる。最後は確かに☖8八歩ではなく☖7七桂不成を逃したのが痛かったようだ。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第5期竜王戦ランキング戦6組決勝(主催:読売新聞社、日本将棋連盟)