1992/6/12 米長邦雄九段—藤井猛四段(勝抜戦)

感想

大棋士、米長邦雄九段との一戦。

オールスター勝抜戦は2003年度まで行われていた棋戦で、その名の通り負けるまで対局がつくので対局数や勝ち数を稼ぐことができるおいしい棋戦だ。

戦型は藤井四段の四間飛車に米長九段の棒銀。☖3三桂と跳ねる典型的な定跡型になった。

24手目に☖5四歩ではなく先に☖1二香と上がったのが藤井四段の工夫かと思ったが、小林健二九段によると50手目の☖3六歩が藤井四段の新手ということだ。この手は『四間飛車の急所 第3巻』に「手筋」として記載されているが、藤井四段が初めて実戦で披露したことが分かる。「典型的な定跡型」と書いたが、定跡となるような将棋を藤井四段自身が指してきたのだ。

米長九段の端攻めが絶妙な嫌みの付け方だが、77手目の局面は振り飛車として不満が無いと思う。そこで☖6五銀は藤井四段らしい手だった。☗9四桂が嫌に見えるが、打たせても勝負できると見ている。94手目☖8五香と打って、☖6五銀の顔が立つようになってきた。しかし☗7七金が桂馬から逃げつつの受けで味が良さそうだ。

ここからのやりとりが凄い。90手目☖5五飛が受けづらそうな飛車回り。米長九段はどうやって受けるのかと思ったが、飛車成りを受けず☗6四角と攻め合った。これには驚いた。☖5九飛車成に☗4九金打とワンテンポ遅れた凄まじい受けを見せた。こういう受けは稀に見かけるが、今回は玉が近すぎていかにも危険そうだ。

藤井四段は攻めの手を緩めず追い込んでいく。玉が近づいてお互いすぐに寄ってしまいそうだ。どちらが勝ちか分からない見応えのある終盤。126手目☖5六歩ではなく先に☖9四歩だったらどうなっていたのだろうか。☖6四の角を取り、最後に抜け出したのは米長九段だった。

本局、☗9四桂を打たせる藤井四段の立ち回りも印象的だったが、☖5九飛成に☗4九金打という受けを見せた米長九段にも痺れた。お互いに魅せる将棋だった。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

☗9四桂を打たせたところは藤井四段に若干振れている。藤井四段の大局観が光っている。一方で☖5九飛成☗4九金打のところも後手に大きく振れていない。これで一気に寄る訳ではないということだ。先手に大きく振れたのは114手目☖6四角のところだった。本譜でも何かありそうなだけに意外だった。ただ、126手目☖5六歩の代わりに☖9四歩としても、☗8六銀で先手の優位は揺らがないようだ。香車は取れないし、☗8五銀~☗6五桂の追い打ちがある。☖5六歩はそれを防いだものだったが、☗6七飛がより厳しい一着になってしまった。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)
  2. 小林健二『小林健二のスーパー四間飛車』(『近代将棋』1992年11月号)

棋戦情報

第14回オールスター勝抜戦(主催:日刊ゲンダイ)