1992/10/6 中田章道六段—藤井猛四段(順位戦)

感想

中田章道六段との順位戦。中田六段は詰将棋作家の印象が強い。順位戦成績はここまで中田六段が1勝3敗、藤井四段が3勝1敗。

戦型は藤井四段の四間飛車に中田六段が左銀急戦の形になった。藤井四段、本局は当時のオーソドックスな形であった☖5四歩型とし、中田六段が端角作戦に出た。

中田六段は端角作戦ではあったが、すぐ☗7九角と引くのではなく、旧式の☗8六角だった。その後☗6八角ではなく☗5七銀上とし、☗8六角のまま攻める構想を見せた。そして突然、☗4五桂☖同飛☗3一角成と、桂馬を犠牲に馬を作りにきた。ここまで中田六段は3時間45分の消費時間を記録しており、この強襲は事前に練ってきた作戦ではないことが想像される。藤井四段も2時間29分時間を使っており、中田六段の構想に慎重に対応している様子が窺える。とは言え、☗8六角型に対し☖8四歩とプレッシャーを掛けるなどして、この仕掛けを促したような雰囲気も感じる。

45手目☗2一馬まで進むと駒の損得は互角で、先手だけ馬を作っている状況ではあるが、☖3三角が後手陣に利いており、馬よりも角の方が働いていそうに見える。玉の堅さも後手の方が堅く、やや後手が良いのではないかと思う。藤井四段の対応が冷静で上手い。

そして☖6三金ではなく☖6三銀としてから玉頭から攻めかかったのが、さすが藤井四段の中終盤力だった。飛車に紐がついた状態で、中央を厚くしながら、玉頭から攻めやすくする。一石三鳥以上の構想だった。しかし玉頭は薄くなるデメリットはあり、中田六段はその弱点を的確に突いてくる。藤井四段の素晴らしいところは、それでも問題ないと見切っているところで、81手目は玉がほとんど裸の状態になったにもかかわらず、見事に凌いで悠々と先手玉を寄せた。

4三の金取りと☗7三歩成、さらには☗8二飛成のような様々な狙いがありいかにも怖いが、☖6三金ですべて受かっている。悪くなったところがない快勝譜に見える。お見事。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

☗4五桂からの攻めを上手く受け止め、玉頭からの攻め形を作ったところでリードを奪い、そのまま押し切ったようなグラフであった。後手玉が薄くなっても確かに問題なかった。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第51期順位戦C級2組(主催:毎日新聞社、日本将棋連盟)