感想
千日手になり藤井五段は再び先手を得た。
藤井五段は3手目、3分考え三間飛車に構える。今までの将棋から離れ、力で勝負しに行く意思を感じる。対して宮田七段は位取りではなく天守閣美濃に組んだ。
36手目の局面は飯塚祐紀四段戦(1993/2/16・順位戦)と同一局面。
経験したことのある形と思えば心強い。8筋からの仕掛けに対しても、☖8五歩に☗6五歩は飯塚四段戦と同様の対応。☗6五歩はワンテンポ遅く、☖7三桂で歩が守れないようだが、平然と☗6六角で問題ない。☖6五桂には☗5五歩があり、☖同歩は☗同角が飛車当たり、☖6四角も☗5六銀で桂馬を守れない。
46手目☖6四歩は最も得をしようとする手だが、☗7五歩の切り返しがハッとする手。これでどうしても☗7四歩が受からない。しかし先手は歩切れになる上、後手も☖8六歩から飛車先突破が確定する。
57手目、藤井五段はどういう対応をするのかと思ったが、☗9六角という端角を見せた。
なるほど、後手の飛車先突破は確定と思ったが受けがあった。この角は☗6三角成や、場合によっては☗4一角成という手も狙えるのも良い。見れば見るほど良い角打ちだ。
宮田七段はあっさり8七の地点で精算し、後手陣を睨む角の利きを逸らし、☖9四角と端角返しをする。これもまた味が良い。☗5八銀が一番指したい手だが、☖8八飛が角銀両取り。それでも難しそうだが、藤井五段は☗5七金と耐えた。☖3五歩が怖いが、☗同歩で☗3四桂が残って先に後手玉を寄せられるということだろう。やはり☗4一角成があるのが大きい。☗5七金は☗9六角と☖9四角の働きの差とつけた言える。☖6七角成は怖いが、角や銀を渡さない限りは大丈夫。
そして67手目☗6三飛。突然決め手が放たれた。☗7三飛成と☗4三飛成☖同銀☗4一角成の狙い。宮田七段はおそらく打ちたくない桂馬を打って無理やり角を除去するが、☗4三飛成~☗3四竜が冷静で厳しい手。竜が居座っただけであるが、☗2四竜~☗3四桂や☗3五桂が受けづらい。一気に投了に追い込んだ。
これで順位戦5連勝。最高の形で折り返し地点に到達した。
評価値
難しい勝負が続いていたが、☗5七金~再度の☗9六角で先手に振れ始め、一気に突き放した。
参考文献
- 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)
棋戦情報
第53期順位戦C級1組(主催:毎日新聞社、日本将棋連盟)