感想
若手選抜の早指し新鋭戦。強い若手同士が対決する。
豊川孝弘四段との一戦。これで3局目で、ここまで1勝1敗。過去2局の豊川四段の作戦は矢倉引き角、天守閣美濃と来て、どのような作戦でくるか良く分からない。
本局、豊川四段が☗6六歩と止め、藤井四段が☖3五歩としたことで相振り飛車模様となった。しかしその後豊川四段が玉頭位取りに切り替え、戦型分類としては相振り模様対抗形となった。
藤井四段はこの直前の対局も対玉頭位取りであり、そこではすぐ反発したが、本局では☖5三銀と☖3一角の組み合わせで☗7五歩を掠め取りに行った。38手目☖6四銀に☗同銀☖同角☗7六銀のような手では☖3六歩が激痛。そこで豊川四段は☗7六銀と引いて7五の地点で銀交換となった。藤井四段は何の代償も無く玉頭の歩を得し、後手の作戦が上手く行っているように見える序盤だ。
豊川四段はそれでも中央に厚みを築いたところ、歩の手筋を駆使して銀や香を上ずらせ、68手目☖3六飛で十字飛車を実現させた。これで後手が良ければあまりにも話が上手すぎるが、豊川四段は☗6六角とぴったりした受けを用意していた。
70手目☖8五銀はBプランのような手で、☖3六飛が上手く行かなくても別の手段があるという主張があるようだった。しかし75手目☗7七金が分厚い受けで、有効な攻めがなかなか見えない。76手目☖4九角打☗5九飛の2手が入ったことで、☗5三歩成も残り、後手に忙しさが出てきた。
☖4九角は死んでいるので☖6七角成と切るしかないが、そこで☖1二角が珍しい振り飛車からの遠見の角。これで確かに☗5三歩成の筋は緩和された。しかしその代償に攻め駒がどんどん少なくなってきた。さらに☗2四飛~☗2三歩を間に合わされ、角も使えなくなった。この辺りは既に先手が良くなっていそうだ。
美濃囲いはそのまま残っていたが、☗5三歩成と☗6六香であっという間に炎上してしまった。111手目に出てきた☗7二歩は寄せの手筋として参考になった。
厚みのある将棋に2連敗。悔しい。しかし位取り系現代ではあまり見かけない将棋で、並べていて楽しい。
評価値
遠見の角のところが最も後手に振れていたが、明快に勝ちに持っていける将棋ではなさそう。先手が良くなっていると思った局面も、実際にはまだ後手の方に振れてはいた。しかし流れは明らかに先手。「中段玉寄せにくし」を体感することになった。
参考文献
- 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)
棋戦情報
第12回早指し新鋭戦(主催:テレビ東京)