1990/10/31 飯田弘之五段—藤井猛三段(新人王戦)

感想

プロ入り前ではあるが、藤井先生の公式戦デビューになるのだろうか。

飯田五段は振り飛車党で、相振り飛車をあまり指さなかった藤井三段が居飛車を持つ形になった。しかも藤井三段の天守閣美濃という将棋だ。

当時は「対左美濃藤井システム」も無い時代で、飯田五段はシンプルな☗8二玉型美濃囲いとした。これを咎めるように☖3一角~☖6四角と角で先手玉を睨み、桂馬の活用を牽制したのが鋭い。しかも☗4七金の瞬間に敢行したため先手の飛車を☗8八に追いやることができ、さらには☖4五歩と位を張った。

対左美濃藤井システムに目が慣れた今、振り飛車がやりたいことを一つもさせなかった印象だ。序盤は居飛車の主張が大きく藤井三段の作戦勝ちだったのではないかと思う。

この後は攻守が何度も入れ替わる激戦で非常に見応えがあった。藤井三段の攻めが決まったように見えて、まるで藤井システムの居玉のような☗5九玉が遠い形になってしまったのは幻惑を見せられたようだった。

受けに手を戻さざるを得なくなり、飯田五段良しのところもあると思う。ただ、再度先手の猛攻が始まった時☖4二金(114手目)が際どいながら上手い受けでなかなか寄らないのは感動した。

手駒を蓄えた藤井三段が最後はきっちり寄せた。

将棋自体も非常に見応えあったし、プロ入り前ながらごちゃごちゃしたところを抜けていく藤井先生の強さを感じさせる良い将棋だった。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.1/1手20秒)

やはりシーソーゲームになっていたようだ。形勢の針が大きく振れている手一つ一つには触れないが、玉が近い、あるいは玉が薄い分、一手の価値の大きさと怖さが増大することを再認識した。ただ、80手目周辺相当後手に振れていたのは意外だった。☖3一桂(82手目)がぴったりの受けだと思ったが、強く☖2六銀で先手玉への攻めが続くようだ。しかし後手玉が薄いので怖すぎる。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)
  2. 『将棋世界』2001年3月号付録『藤井ブック 藤井システム・次の一手』

棋戦情報

第22期新人王戦本戦(主催:赤旗、日本将棋連盟)