感想
順位戦4連勝中の藤井五段と3連敗中の宮田七段の一戦。宮田七段とは過去1回対局しており、宮田七段の玉頭位取りに勝利している。
本局も藤井五段の四間飛車に宮田七段の玉頭位取り。
10手目☖3二銀のタイミングが珍しい。
この時期、駒組みの呼吸は☖6二玉~☖7二銀がセットのようだった。☖6二玉~☖3二銀は、玉頭位取りに対し穴熊に囲う含みを持たせたものだと思う。結局14手目☖7二銀として通常の美濃囲いになったが、早めに☖7五歩とされれば振り飛車穴熊に組んだと思う。序盤の駒組み手順の違いは、結局同じ形になったとしても、水面下の変化も異なれば対局者心理にも影響を与える。ちょっとした違いだが、相手によって将棋は変わり、機械的に同じ駒組みをする訳ではない序盤が面白い。
藤井五段は☖4四銀型に構える。対して宮田七段の☗7九角が珍しい。このタイミングであれば☖2二飛と受けるしかない。ただし、☗5七銀とすれば角の利きを遮ってしまうため、どれ程の効果があるかは分からない。
本譜は先手の角の動きを咎めるように、藤井五段が積極的に☖3五銀と出た。☖2四歩や☖4六歩の仕掛けを見せたこと、また☗6五歩の歩交換を牽制した形になり、十分な体勢を整えた。宮田七段は後手の攻めを発動させるわけにはいかず、☗7七角~☗6八角を繰り返し、千日手になった。
順位戦2局連続の千日手。どちらも後手番だったので藤井五段が上手く指していると言える。藤井五段は位取り系の将棋に対しても問題なく対応している。ただし、本局は約30分の時間的ハンデを負うことになった。
評価値
参考文献
- 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)
棋戦情報
第53期順位戦C級1組(主催:毎日新聞社、日本将棋連盟)