感想
小野修一七段との戦い。小野七段とはこれが初手合い。
戦型は藤井五段の四間飛車に小野七段の居飛車穴熊。居飛車穴熊と銀冠にがっぷり組み合うのは島朗八段戦(1994/5/30・王将戦)以来。藤井五段の「組ませて戦う」将棋を並べられるのも楽しみがある。
小野七段は☗7八飛から歩交換をする形。
藤井五段の50手目☖4一飛はこの形において見られる対応で、深浦康市四段戦(1992/6/1・竜王戦)、大島映二六段戦(1992/6/4・早指し選手権戦)がある。
これまであまり気に留めてこなかったが、この場合における形なのだろうか。角の動きが楽になっていること、☗2四歩☖同歩☗2二歩の筋は☖1三桂~☖2五桂が角当たりで☗2一歩成も防いでいること、5筋に移動したときに☗6一銀の割打ちも防いでいること等、何かと損のない形になっている感じはする。
本譜は一瞬千日手模様になったが、66手目☖8五歩が積極的な一手。歩が手に入れば☖7五歩から銀を入手できる。そこで☗6八金引で銀の引き場所を作ったが、その瞬間中央が薄くなっており、☖5五歩と仕掛けた。機敏な動きだった。☗6七銀と味良く受けることができたようでも☖8六歩が継続手。☗7八金で4枚穴熊が完成したが、既にあちこちに火の手が上がっている印象を受ける。振り飛車がうまく動いている。
75手目☗8七同銀が問題の一手。☖5七歩☗同飛☖3五銀!の大技が決まった。
☗同歩は☖6六角の王手飛車取りで、☖6六角に☗7七飛と受けても☖8五桂の追撃がある。やむなく☗3五同角としたが、角銀交換の駒損を取り返すことができるような局面ではなく、8筋に歩が立ち、後手からどんどん手が生まれる将棋となっており、終盤に入る前に小野七段が投了した。75手目は☗8七同金であればまだまだ難しい将棋だったと思う。
振り飛車らしい大技を決めて快勝。
評価値
がくんと下がっているのは☗8七同銀の局面。一手で終わってしまう将棋の恐ろしさを感じるが、機敏な動きを見せて先手にプレッシャーを与え続けたことも効いていると思う。
参考文献
- 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)
棋戦情報
第36期王位戦予選(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)