1992/7/21 藤井猛四段—中井広恵女流名人(王座戦) ※指し直し局

感想

指し直し局。藤井四段が32分多い状態で始まった。

戦型は藤井四段の三間飛車に中井女流名人の天守閣美濃となった。藤井四段はまったく同一の形を天野高志アマ戦(1991/12/12・竜王戦)で経験しているが、☗6五歩で玉頭ではなく左辺の戦いになった。

藤井四段の歩の小技が上手いと思ったが中井女流名人の対応も上手く、69手目☗7七歩までの進行はやや藤井四段が辛抱した展開に見えた。

79手目にしてようやく☗2六歩が出た。やはりこの戦型は玉頭から攻めるのが急所か。

82手目☖3五歩は中井女流名人の勝負。先手の最も急所を突く手であるが、後手の弱点を晒す手でもある。ここからの藤井四段の指し回しがこの将棋のハイライトだと思う。図にもあった☗4五角が、玉飛接近の悪形と天守閣美濃の玉頭という弱点を的確に突いた強烈な手だった。中井女流名人は先手の弱点を突くべく☖3四飛と移動してきたものの、☖8四飛と戻ることになってしまった。

そしてこの投了図、玉頭の分厚さに痺れる。やはり藤井四段の玉頭戦は魅力的だ。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

中盤は印象通り後手の方にやや振れていた。苦しい時は歩を打ってでも相手の足を止め、左銀のような駒をじわりじわりと押し上げる。そして相手がリスクのある攻めをしてきたときに、ちゃんとその弱点を突く。藤井四段の辛抱の仕方が参考になった将棋だった。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第41期王座戦一次予選(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)