1994/9/16 藤井猛五段—安西勝一五段(棋聖戦)

感想

安西勝一五段との対戦。安西五段とは過去公式戦で1戦1勝、非公式戦で1戦1敗という戦績。いずれも安西五段が振り飛車で藤井五段が居飛車の対抗形になっている。

本局の戦型は、振り飛車党同士でたまに見られる駆け引きの末、相矢倉になった。

安西五段はじっくり矢倉を構築していくのに対し、藤井五段は☗7七銀を省略して角道を通したまま、☗5七銀~☗5五銀と早速中央から動いていった。相居飛車はよく分からないが、非常に仕掛けが早い印象がある。

34手目☖8四飛でひと段落。藤井五段の角は☗3七角に転回し、後手玉ではなく飛車の方面を睨む角になったが、後手の右辺の駒が使いづらくなっている。ここから第二次駒組み合戦が始まり、先手玉もしっかり入城することができた。

第二次駒組み合戦中☗2四歩と突き捨て、利かしを入れたようだが、安西五段はそれを逆用して☖2三金から上部に厚い形を作った。先手からすれば攻めづらくなったように見えるが、☗4六角~☗3七桂~☗5七角~☗4六歩~☗4五歩の仕掛けを作ったのがお見事。☗6六角は☗6六歩を突いていないことを活かしている。ただ、安定しているとは言えない。この角をどこまで活かせるか。

安西五段はとにかくすべてを受け止める方針で、右金も☖5四金まで押し出してきた。攻めを切らすわけにはいかない藤井五段は2筋→1筋→3筋の歩を突き捨てガンガン攻めて行くが、攻めが細そうに見える。

86手目☖1四金で桂馬が取られそうだが☗3三桂成という手があった。

☖同角でも☖同桂でも☗3四歩があるので☖同玉だが、☗3四歩~☗3五歩と上部を押さえて☗5六歩で攻めが続いている。後手陣は☖3三の銀が動いたことで4三の地点が弱点になっており、☗5六歩を足場に☗5五銀~☗4四歩~☗4四銀と右銀が進出することができた。

☗4三銀成(不成)が受からず、攻めが切れなくなった。不安定な☗6六角を活かし、ギリギリの攻めを繋ぎきった。☗3三桂成から☗4四銀までの手順は本局で一番印象に残った。

網が破れてしまった後手陣ではあるが、攻めはまだ細い。さらに上部に脱出されると難しくなる。それを解決したのが113手目、ガツンと金をぶつける☗5七金だった。これで持ち駒を増やし、跳ねてきた☖4六桂も召し取ることができた。さらに50手近く前の突き捨てを活かした☗1五香~☗2四金が決め手。最後は歩1枚も余らないぴったりの寄せだった。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

☗4四銀まで攻めを繋いだところは後手がやや良いと出ている。☖4六桂で先手に振れた。この桂馬は後にほぼタダで取られてしまったので、☗5七金を軽視していたかもしれない。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第66期棋聖戦一次予選(主催:産経新聞社、日本将棋連盟)