1991/10/8 藤井猛四段—高田尚平四段(順位戦)

感想

高田流左玉で有名な高田四段との順位戦。両者とも3勝1敗だ。

高田四段が☖8四歩と突かずに☖6二銀としたところで右四間飛車を悟ったか、藤井四段は16分考えて☗7八飛と三間飛車に構えた。そこからすぐ石田流に組み、☖5四銀に☗7七桂と対応したのは参考になった。自分は普段四間飛車から三間飛車に振り直すことが多いが、初めから三間飛車だとこうしてスムーズに石田流に組めることを知った。

高田四段は☖4五歩~☖4四角と「らしい」陣形を展開してきたが、☗5六歩がささやかな手ながらこちらも参考になった。歩越し銀には歩で対抗する格言に沿った手ではあるが、この場合☖5五角の活用も防いで非常に味良く見える。

36手目の局面は先手陣が自然な構えである一方、後手陣は薄く、特に飛車が活用しにくいことから先手の作戦勝ちに見える。ここから藤井四段が仕掛けていく。陣形がほぐれ、駒の交換が行われればますます先手の良さが明らかになっていくようだった。

54手目の☖3六歩は驚愕の反撃。高田四段の勝負手に見える。☗7三歩成に追われる流れで☖4二飛と回ろうとしている。藤井四段は☗5六銀としっかり埋め、☖3七歩成に☗同銀としたところは☖同角成を誘っているようで、局面に自信を持っているように見える。

65手目☗8五桂が面白かった。☗7三歩成はやはり手順に飛車を活用されるので、それよりも☗8八角から先手の角を活用できるようにした。そして75手目☗4四飛から飛車と後手陣の守りの金の2枚替えを果たした。飛車を成り込むよりも良い手があった。

82手目☖2五銀に☗3九玉から藤井四段は際どい勝ち方を見せた。☖7七歩にも☗同角と取って、☖7三飛と回るぞと言っているのに、それを敢えて促すように☗4四歩と打って☗7四歩が見事な切り返し。☖3六桂となって先手陣はいかにも危ないが、☗1八金で受かっている。斬りかかってくる刃を何食わぬ顔で躱しているようだった。思わず声が出るような勝ち方だ。

本局も藤井四段の快勝譜と言って良いと思う。初参加の順位戦はこれで4勝1敗。1敗は痛い逆転負けであったが、上手く立て直して好調に星を重ねている。

感想

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.1/1手15秒)

中盤高田四段に攻めを促したところも、最後余すところも、後手に振れそうなところは無く、藤井四段の正確さが際立っている。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第50期順位戦C級2組(主催:毎日新聞社、日本将棋連盟)