感想
藤井先生は1994/4/1付けで四段昇段であり、プロ入り前最後の対局だったと思われる。
本局は真田三段が角道を開けたまま左美濃~穴熊に組む趣向を見せたが、藤井三段は堂々と銀冠に組んだ。後手の右金を穴熊にくっつけづらいというのが先手の主張の一つだと思う。ただ、☗1八玉~☗2八玉と一人千日手気味になり、先手としても不満だったのではないだろうか。良さを求めに行く藤井先生の将棋で一人千日手というのはほぼ記憶にない。
本譜は玉の堅さを活かすべく、真田三段が敢えて先手に仕掛けを促し、それに反発した。後手の右金が浮いた状態で開戦することになったため、先手としても不満がなくなったと思う。中盤、☗6六角(59手目)が味の良い攻防手だった。今度は先手が銀冠の厚みを活かし、☗2五歩を絡めた攻めを見せた。当然☖2六歩の反撃にあうが、☗1八銀と引いたのが冷静で自玉に寄りはなく、一方的に穴熊を崩した形になった。玉頭の攻防で一気に差をつけたように見える。藤井将棋は銀冠も魅力的だと思う。今も昔も藤井先生の☗2五歩は自信に満ち溢れている。
評価値
玉頭戦のどこかで差が開いていったと思ったが、☖7八角(62手目)から既に離れていた。一段竜+☗6六角の形で☗2五歩を実現させた後は、難しい手は不要と言うような、自然な手の積み重ねで差を広げていった。意外だったのは、☗6六角(59手目)のところは☖6五歩で後手に少し振れていること。なるほど、☗2二角成☖同玉☗6二飛成の2枚替えは☖8四角があると示された。もしかしたら6二の金は毒まんじゅうになり得たかもしれない。
参考文献
- 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)
棋戦情報
第13回若駒戦(主催:大阪新聞)