1992/8/25 藤井猛四段—櫛田陽一五段(順位戦)

感想

世紀末四間飛車で知られる櫛田陽一五段との対戦。私の場合、☖4一金型四間飛車に出会うまでは、特に☗4五歩早仕掛けの対応で「世紀末四間飛車」に書かれてある変化にお世話になることが多かった。

ここまでの順位戦成績は藤井四段が2勝0敗、櫛田五段が0勝2敗。

四間飛車党との戦いということで、藤井四段は居飛車、さらに居飛車穴熊を選択した。序盤でちょっと珍しいのは、☗9六歩と穴熊の端を挨拶したことだった。

居飛車穴熊を組みあげたところで、藤井四段が☗3五歩から☗6五歩といきなり攻めかかった。一見無理そうではあるが、穴熊と高美濃の囲いの差を大きいと見ている感じがする。特に高美濃は美濃~高美濃~銀冠の中で最も中途半端と言える。部分的に厳しいことは間違いなく、飛車を成り込めるので少なくとも先手の攻めは切れない。四間飛車党として櫛田五段の対応が楽しみだ。

櫛田五段の対応は飛車先を突き捨ててから☖3九角だった。続けて☖9五歩が序盤の☗9六歩を逆用された感じがする。指した手を逆用される筋に入ってしまった辺り、藤井四段劣勢に見えた。

しかし一瞬相手の銀が遠ざかった瞬間、67手目から藤井四段が猛烈に襲い掛かる。特に79手目☗9三金は☗8四にいた金をタダで捨てる手で思わず声が出た。

先手玉もまだ遠く、かなり追い込んでいるように見えたが、この後☗9三角の瞬間という際どいタイミングで☖8六歩が入ってしまった。雰囲気詰めろで、王手竜の筋が生じることになってしまったため、一手受けの手を入れざるを得なかったのは大きかったと思う。狙いすましたカウンターだった。以降、櫛田五段は竜を二段目にキープしながら、あくまで8七の地点を狙って寄せていった。詰み手順の手数が長いので難しいが参考になった。

2連勝で迎えた先手番を落とし、藤井四段にとっては悔しい一局だったと思う。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

仕掛けてからも、櫛田五段のカウンターがあっても、藤井四段側に振れていた。櫛田五段の対応が上手いと思っていたが、藤井四段の仕掛けは成功だったのかもしれない。特に☖5七銀と銀が遠ざかってから藤井四段が猛烈に攻めかかったところは、1000点近く離れることもあった。大きく後手に振れたところは☗9三角に☖8六歩が入ったところだった。☖8六歩が入ったことは想像より大きな出来事だった。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第51期順位戦C級2組(主催:毎日新聞社、日本将棋連盟)