1991/4/12 堀口弘治五段—藤井猛四段(棋聖戦)

感想

プロデビュー後初の四間飛車。今の目で見ると四間飛車の構え方でも、☖3二銀~☖4二飛という順は新鮮に感じる。今では☖3一銀の活用は後回しにする。

本局は藤井四段の四間飛車穴熊に対し、堀口五段が銀冠から角道を開けたまま仕掛けを狙った。堅い囲いで黙って仕掛けられるのを許さないというように、藤井四段が袖飛車から動いたところ、☗2四歩~☗2二歩のカウンターを喰らった。その後角を逃げずに☗5五桂と両取りから☗5三金と張り付かれたところは、堀口五段の流れるような攻めが続いた印象を受ける。

苦しそうなところ、持ち時間3時間のうち70分を投入して☖5一桂(56手目)と受けたのは印象的な辛抱の一手だった。

角は取れなかったが、この桂馬が躍動した。ただ、☗9八玉が冷静な一手で銀冠が堅い。

途中、☗4四角☖4三飛☗2四飛☖4四飛という手順があった。単に☗2四飛は☖3三角の王手飛車があるため☗4四角は分かるが、角をタダで渡して飛車を成り込むのは驚愕だった。飛車を成り込んで☖7二銀と受けさせ☖7一香の利きも緩和しているので、陣形の差もありこれで十分なのだろうか。

藤井四段の辛抱や必死の喰らいつきも印象的であったが、本局は堀口五段の指し回しが最後まで見事だったと思う。藤井四段の初黒星となってしまった。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.1/1手20秒)

☗2四歩~☗2二歩のカウンターのところは既に500点程度先手に振れており、後手が袖飛車から動くしかなかったのであれば、そもそも先手の作戦勝ちだったのかもしれない。☖5一桂の辛抱は実っていたようで、評価値上ほぼ互角に戻っている。ただ、☗5五歩に対して☖同桂の跳躍でなく☖同歩とし、☖7五桂の余地を残しておいた方が良いと言う。☖5五同桂~☖4七桂成の味が良さそうに見えて、☖4七の成桂が玉から遠すぎてなかなか働かせることができなかったこと思うと、なるほどという感じがする。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第59期棋聖戦一次予選(主催:産経新聞社、日本将棋連盟)