1991/4/3 藤井猛四段—山口英夫七段(棋聖戦)

感想

藤井先生のプロデビュー戦。

山口英夫七段は振り飛車党であり、藤井四段は3手目に居飛車を明示した。ところがそれを見た山口七段も居飛車にし、藤井四段のデビュー戦は相居飛車となった。

お互い早囲いからの矢倉となるが、藤井四段だけ飛車先の歩を伸ばしており、先手の方が攻撃しやすい形となった。藤井四段の作戦勝ちであったと思う。

中盤、いきなり放った☗6一角(47手目)が、☗7二歩で飛車の横利きを止め、☖4三の金を狙う名角であった。

さらに☗6五歩(57手目)~☗5五歩(59手目)~☗6六銀(61手目)が攻めを呼び込みつつ銀を交換し☗4一銀(65手目)と引っ掛けたのも☗6一角を活かした攻め。矢倉の急所を知っているようだった。そしてそのまま☗3五歩(69手目)から襲い掛かり、緩むことなく寄せ切った。

非の打ちどころがなく、華々しいデビュー戦だったと思う。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.1/1手20秒)

これぞ藤井先生の完勝譜。☗6五歩(57手目)からの手順は感動したが、将棋ソフト的には☖8一飛から粘る順があるので☗7一歩成とした方が良いという。ただ、藤井四段は飛車の横利きを止めつつ本譜のような理想の攻めを描いていたと思うので、本譜で良ければそれが一番良い。実際の形勢は☗3五歩(69手目)に☖同歩としたあたりから急激に離れていったようだ。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)
  2. 『近代将棋』1991年6月号
  3. 『将棋世界』2001年3月号付録『藤井ブック 藤井システム・次の一手』

棋戦情報

第59期棋聖戦一次予選(主催:産経新聞社、日本将棋連盟)