感想
昔は非公式戦だった銀河戦。本局は第1期銀河戦予選。銀河戦は藤井四段デビューの1991年に始まったことを『藤井猛全局集』で初めて知った。
本局は藤井四段が三間飛車に構えた。それを見て北村八段は穴熊。三間飛車対居飛車穴熊の構図はもう何十年と続いているのが分かる。藤井四段は銀冠まで組み替えた。
この頃の将棋は持久戦でも6筋の歩を突くのが見受けられる。近年ではほとんど見ない気がする。☖4二角としたときに角道が止まっているというデメリットはあるが、☖6五歩からの仕掛けの狙いや☗6五歩という伸張性を防いでいる意味合いがあるのだろうか。
藤井四段が丁寧に居飛車の理想形を阻止していった序盤に見えたが、北村八段も4枚穴熊にまで固めた。最も固くなったところに藤井四段が仕掛けたが、北村八段は堂々と応じる。攻めてもらってカウンターを狙うのが居飛車穴熊の戦い方か。ただぶつけた歩を取れないようでは先手はさらに好形に組めるので、もしかしたら北村八段の応手は仕方ない面もあったかもしれない。となれば藤井四段が上手く序盤をこなし、機敏に仕掛けたと言える。ところが、その後藤井四段の辛抱したような順を見て、もしかしたら藤井四段はやや悪いと見ているのではないかと思った。今の藤井九段なら指さないようなやや消極的な手順だった。
この後北村八段からの攻めが続き、6筋の形を活かされてしまった辺りは実際に北村八段が良くなったと思う。それでも藤井四段の穴熊への嫌みの付け方はさすがで、穴熊も弱体化しまだまだ難しそうではあった。
最後は天王山の角打ちが上手い切り返しかと思ったが、北村八段はそれを上回る切り返しを用意していた。余りにもぴったり。穴熊の遠さは本当に厄介だ。
自戦記編第1局によると、本局の敗戦で焦燥感を覚え、本格的に四間飛車を勉強し始めたとのことだ。
評価値
予想に反して、仕掛けられたところはほぼ互角ながら若干先手に振れていた。自分の形勢判断がいかに適当かが良く分かる。ただ藤井四段がうまく序盤をこなしたのは間違いない。後手に振れていったのは穴熊に嫌みをつけ始めたところで、並べているときは「こうやって穴熊を弱体化させるのか」と思っていたが、実際には逆に攻められる味が生じてしまったということかもしれない。確かに逆襲を防ぐべく玉頭を強化したことで、今度は5筋から小技が刺さるようになってしまった。
藤井四段が盛り返してきたところ、115手目で大きく後手に振れた。118手目に☖4九角という明快な寄せはあったようだが、本譜も天王山の角打ちが上手い切り返しにならなかった等、何か誤算があったかもしれない。この辺り一気に負けになっており非常に恐ろしい。
参考文献
- 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)
棋戦情報
第1期銀河戦予選(主催:サテライトカルチャージャパン)