感想
高田尚平四段との対局。不思議と同じ棋士との対局が続くことがある。
天王戦は1992年まで行われていた棋戦。今の叡王戦と似ており、段位別の予選があり、各段から2名ずつ本戦進出者を決めていたようだ。
本局はまさかの相掛かり。高田四段が3手目☗9六歩と様子を見た手に対し、藤井四段は☖8四歩と居飛車を明示したが、高田四段が☗2六歩としたことで意表の相居飛車となった。
それでも棋風は出るもので、藤井四段はひねり飛車にして軽い形に、高田四段は金銀を盛り上げる形にし、対照的な将棋の作りになった。
64手目、藤井四段の☖4一玉が上手い一手。6~7筋で争いが起こることが分かっていた。本局は藤井四段の好手が頻発するが、この☖4一玉が一番好みだ。この後☖4五桂(74手目)という妙手、☖6六歩(76手目)という小技、そして☖6六桂(88手目)という決め手、相掛かりで見慣れない形のはずだが、鋭い手を連発して一気に決めた。非常に気持ち良い。投了図まで完璧な指し回しであった。
評価値
☖4五桂(74手目)から後手に振れ始め、あとは一気に畳みかけたような曲線だ。数字上は☗5六銀打(83手目)に☖5七金が決め手だったようだ。
参考文献
- 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)
棋戦情報
第8回天王戦四段戦(主催:十社)