1993/5/18 浦野真彦六段—藤井猛四段(王将戦)

感想

浦野真彦六段との対局。将棋も、将棋に対する姿勢もカッコいい棋士。

本局は藤井四段の四間飛車に、浦野六段は居飛車持久戦を選択。がっぷり四つの相銀冠になった。ただし居飛車が☗9五歩と端を取っているのが珍しい。

44手目☖2四歩が相手の理想形に組ませない一手で、居飛車の角と右桂が若干使いにくくなっている。

51手目は振り飛車が一方的に十分な形を築いたところで、今のうちに仕掛けを考えたいところ。藤井四段は☖9四歩と地獄突きを敢行した。銀冠と相性が良い仕掛けで、藤井四段が作戦勝ちから優位を広げようとしているように見えた。

55手目☗5七角~☗3五歩は歩を入手した浦野六段の反撃。なるほど、意外と対処が難しいと思ったが、☖4六歩が爽やかな切り返し。

☗同角は桂を4五に跳ねる余地ができるので☗同歩だが、☖3五角で見事に桂頭攻めを対処した。

後手の角が先手玉から逸れたことで、浦野六段は目標を玉頭に切り替えた。ただし、玉頭は相手の弱点でもあるが、自玉の弱点でもある。藤井四段は浦野六段の動きに乗じて玉頭を抑え、☖6六桂で相手の玉のそばの金を狙いつつ角の利きも遮断した。

事も無げに手を進めていくので簡単そうに見えるが、やはり「上手い」と感嘆する。78手目の局面は優勢になったと思う。

そして80手目、満を持して☖2五歩。遠いが間違いなく確実で厳しい攻め。浦野六段は紛れを求めて動いてくるが、藤井四段はそれらを冷静に対処し、最後は即詰みに討ち取った。

端を逆襲する仕掛けを敢行してからは、どんどん藤井四段が良くなっていったように見えた。仕掛けの積極性もさることながら、浦野六段の動きに合わせた対応が見事な将棋だった。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.1/1手15秒)

後手に振れてからは一度も先手に振れることは無かった。ただ、☖6六桂のところはそこまで大きく後手に振れている訳でもなかった。やはり相当後手が勝てそうに見えるが、対局者視点ではどうだったろうか。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第43期王将戦一次予選(主催:毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟)