1994/2/3 藤井猛四段—勝浦修九段(王将戦)

感想

勝浦修九段とは3戦目で、藤井四段の2連敗中。過去いずれも藤井四段の振り飛車に勝浦九段の持久戦調の居飛車であったが、本局は相振り飛車になった。先手向かい飛車に後手向かい飛車、そして相金無双。一昔前の相振り飛車の形だ。

勝浦九段は低い陣形で先手の飛車先の歩交換をなかなか許さず、機を見て☖3三銀~☖4四銀~☖3五銀と2七の地点を目指していった。部分的には現代でも見られる攻め筋で、低い陣形から突然襲い掛かるので迫力がある。

藤井四段は☖4四銀と飛車の横利きが消えた瞬間、☗7四歩~☗8四歩と飛車先の歩を交換しに行った。

☗7四歩が印象的な一手で、これは☗7四飛と取る狙いではなく、ここの空間を開けて反撃しやすいようにするためだった。勝浦九段のスピーディーな攻め足に対抗する見事な一手。

「見事」というのは、実際にこの後☗5五角という効果的な反撃を見せてくれたから。勝浦九段も☖3三角や☖4四角と対抗するが、☗同角成~☗5五角、☗同角~☗5五角と、手損お構いなしに何度も☗5五角と据える。

そして☗8四歩~☗8二角成~☗7四銀と一気に玉頭から殺到した。

先に玉頭攻めを見せたのは後手だったが、実際に玉頭攻めを先に実現させたのは先手。藤井四段の☗7四歩からの一連の構想が素晴らしかった。

☖7五銀は最強の反発だが☗7三歩が小洒落た一手。

☗8三銀から寄るためこの歩は放置できない。☖同桂と取らせたことで桂馬が質駒になった。それから☗4一角はガジガジ流らしい決め方。藤井四段が終局まで見事な指し回しを見せた。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.1/1手15秒)

先手が右肩上がりに良くなっていった将棋だと思ったが、実際には難解な形勢が長い時間続いていたようだ。☗4一角は決め手と思ったが、☖2二飛ではなく☖9二角でそんなに簡単に決まる訳でもないということのようだ。しかし将棋の流れは先手にあり、もう決まったと思わせるものがあった。実戦的には先手快勝譜と言っても良いのではないかと思う。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第44期王将戦一次予選(主催:毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟)