1992/1/21 藤井猛四段—大野八一雄五段(順位戦)

感想

大野八一雄五段(4勝3敗)と藤井猛四段(5勝2敗)の戦い。今期順位戦はあと3局。

本局は藤井四段の三間飛車に、大野五段の天守閣美濃。大野五段が☖7二飛と一歩交換を目指してきたのがやや珍しい気がする。☖7五歩☗同歩☖同飛に当然☗7六歩とは打たず、玉頭を狙って☗6八角と引いたのが藤井四段らしい手。その後☗6五歩と☗4五歩の2つの位を取り、一方的に銀冠に組んだ54手目の局面は若干藤井四段が良いのではないかと思う。相当突っ張っているが理想的な形だ。

55手目☗5五歩☖同歩☗6六銀に対して☖7六飛は上手い切り返しだが、この辺りすらすら進んでおり両者想定通りか。61手目☗7七歩もノータイムだが、なんとなく左辺の駒、特に☗8八飛があまり働いていないのが気がかりだ。ただ、☗6七の銀を☗4六銀まで活用して☗3五歩と攻め込んでいけたのは、この駒組みにおいては理想的な攻めにも見えた。

しかし大野五段は堂々と☖同歩。☗同銀に☖3四歩。角銀桂の玉頭攻めを真正面から受け止めようとしている。☖2三銀打(78手目)まで行くと三段目のラインが非常に分厚く、どうも先手が攻め切れそうにない。思い返せば、何気ない52手目☖2二玉が絶妙な玉引きだったことが分かる。☗6八角からの玉頭攻めを四段目でなく三段目で受け止めようとしていたのだ。

93手目にして待望の☗4八飛が回ったが、それを待っていたかのような☖5七桂成が厳しかった。痛すぎる3敗目を喫した。

本局、大野五段は達人のような受けだった。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

少し先手が良いかと思った54手目はまったくの互角だった。☗3五歩と玉頭から攻めかかったところもやや後手寄りの互角。その後も数値上難しいようだが、玉頭から攻めていって大きなポイントを挙げる筋が無いのは、通常の銀冠では反動が大きいばかりでつらいと思う。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第50期順位戦C級2組(主催:毎日新聞社、日本将棋連盟)