感想
飯田弘之五段との王将戦。飯田五段の☗2六歩に、藤井四段がまさかの☖8四歩。相居飛車となった。
飯田五段は浮き飛車からぶんぶん飛車を振り回しリードを奪いに行く。飯田五段が上手くやっているように見えたが、☗3六飛に☖4四角は藤井四段が見せた柔らかい対応で、飯田五段のジャブがすべて有効だった訳でもないと思った。
中盤の進行も局面としては飯田五段がリードしたまま進行しているように見えた。藤井四段の☖7三金を取らせるような手順は驚いたが、☗1八歩と謝る必要があるのであれば難しい勝負なのかもしれない。そして☖9八香成~☖7六香の進行を見ればむしろ後手が盛り返しつつあるように見えた。
それでも、101手目に攻防の飛車を打たれた局面は、玉形の差、駒の損得を考えるとまだ少し先手が良いように見える。
この後飯田五段は☗2五桂~☗1四香と手筋の端攻めを敢行してきたが、藤井四段の☖1七歩成~☖1三歩は自然な対応で先手は忙しくなった。それでも玉頭からの攻めなので受け方が難しい。そこで出た藤井四段の☖1三同玉!はびっくりした。
☖1三同桂と思い込んでいた。☗1四金~☗2四銀とされ、ますます玉頭が潰されるようで勝負手の雰囲気がある。☗2三香が一番怖い筋だがそれは大丈夫、むしろ後手が勝ちということか。実戦はそれを証明するように進行し、☖4三玉まで逃げ込めば確かに後手が勝ちになったように見えた。最後は先手玉を長手数でぴったりの詰みに討ち取った。
本局は飯田五段がリードした序盤だったと思うが、藤井四段も離されないようについていき、最後に逆転したイメージだった。経験豊富な形ではなかったと思うが、最後の美濃囲いに対する寄せは弱点を見極めており見事だった。
評価値
序中盤の形勢判断は全然違っていた。飯田五段が少し良いと思っていたが、ひねり飛車以降はむしろ後手に少し振れていた。ただ101手目の局面が先手良しというのは間違っていないようだ。そして125手目☗2三香のところは完全に後手に振れていった。最後に一瞬互角付近に戻っているが、これは☖3二香の合駒に☗同金とすればまだまだ難しいと言っている。しかし勇気のいる一手だと思う。
参考文献
- 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)
棋戦情報
第42期王将戦一次予選(主催:毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟)