感想
初代竜王、島朗七段との対局。
本局、藤井四段が3手目☗７五歩と三間飛車を明示し、純正石田流に組んだ。対する島明七段の作戦は天守閣美濃だった。
じっくり組み合ったところ、藤井四段は玉側の端の位は放棄し、中央の手を優先した。40手目の局面、居飛車は中央に位を張っているがそれを確保する援軍が少ない。そこで☗５六歩から反発していったのは、端の位を放棄した流れからしても、藤井四段のやりたいようにやれているように見えた。
そこから歩がどんどんぶつかり、藤井四段は角銀交換の駒損ながら飛車を一方的に成り込んだ。さらに左桂も中段に跳んだ。藤井四段が石田流から見事に捌いた。
80手目☖４五角。竜銀両取りだが、藤井四段は両取り逃げるべからずでどんどん攻め込んだ。そして89手目まで進んでみると、竜も銀も取られなかった。
97手目☗５八香も細かいところで、常識的な☗５九香の下段香では☖６七馬が金に当たる。さらに☗４八金打と打ち付け鉄壁になった。この場合は☗５八香の方が堅いというのは勉強になる。
その後島七段はこの鉄壁を崩してくるが、その間に藤井四段は寄せ形を作った。綺麗な一手勝ち。強者相手に快勝譜を残した。
評価値
飛車が成り込んだところは既に振り飛車良し。中央志向の構想が実を結んだ将棋だった。
参考文献
- 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』（日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売）
棋戦情報
第12回全日本プロトーナメント（主催：朝日新聞社）
