感想
竜王戦裏街道、松浦隆一六段との一戦。松浦隆一六段とはデビュー間もない頃に順位戦で対戦し、深夜の千日手指し直しの末敗れた。
本局は相振り模様から松浦六段が居飛車に切り替える相振り模様対抗形となった。
12手目☖6四歩は☗6五歩と気持ち良く位を取らせない手だが、松浦六段はこの歩を狙って☗6八飛から逆襲を仕掛けてきた。さらに☗7五歩~☗5五角と、徹底的に後手玉のこびんを狙ってきた。
極めてシンプル。本局のテーマはこの松浦六段の攻めに藤井四段がどう対応するかに決まった。
藤井四段は角を合わせながら☗5五角を盤上から消していったが、松浦六段はしつこく☗5五角を据える。30手目☖同飛はちょっと面白く、☖3七とを消さない対応と思ったが、36手目☖5四歩で7三の地点にも利かす狙いがあった。上手い。
これには☗5四同銀と取るよりなく、こびん攻めが緩和された。
そして48手目☖3四角~52手目☖同銀!は全てを見切った手順。
☗6一飛成は先手玉が詰む。最後は☖3七のと金を4七~5七まで活用し、見事にまとめた。
振り返ってみると、こびん攻めへの藤井四段の対応は7三の地点を受けるものではなく、角を消し、銀を遠ざけ、その間にと金を作って攻め合う高度なものだった。こびん攻めは厳しいようでも、今回の場合は先手からしても玉頭の戦いであり、しかも玉飛接近の悪形でもある。とは言え、そのリスクを実際に咎められるかどうかは難しい。しかし藤井四段は盤上で答えを示してくれた。非常に勉強になった。
お互い引けない応酬だったこともあるが、藤井四段は26手目☖3七歩成以降ほとんど時間を使っていない。それにも関わらず、強気で、正確だった。終局時刻は16時7分。藤井四段の短手数快勝譜だった。
評価値
先手に振れることは一度もなかった。藤井四段の指し回しは完璧だった。
参考文献
- 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)
棋戦情報
第6期竜王戦昇級者決定戦5組(主催:読売新聞社、日本将棋連盟)