感想
中田宏樹六段との戦い。中田六段とは1991年度に3局と対局が集中したが、4局目は約1年半ぶりの対局となった。この間に中田六段は昇段している。この二人の将棋も好局が多い。
戦型は藤井四段の四間飛車に、中田六段の☗5七銀左急戦。左銀急戦の中でも、☗3七銀引準急戦を採用した。
34手目の☖3四歩打が図になっている。
『四間飛車の急所 第2巻』では、☗6二金☖1二香の交換が入った形で☖3四歩が有力と解説がされている。☖6四角の転換や、☗4四角と出られた時に☗1一角成を避けている。本局は☗6八金を入れずに攻めており、☗4四角が厳しい手になる変化がある。高美濃に組む変化ももともと後手が不満。そうした背景もあってか、藤井四段はこの☖3四歩に72分もの時間を費やした。
☖6四角と覗くメリットは残っており、藤井四段は☖6四角と☖4二金を組み合わせてこの急戦に対応しようとした。
59手目、中田六段の☗3六歩☖同銀と呼び込んでおいて☗2四歩が抜かりない手。藤井四段は☖3四飛と先に逃げたが、そこで☗3六銀と取って、単に☗3六銀と取るより☗2四歩の一手が入っている。こういう得を逃がさない指し方が参考になる。
76手目☖2五同桂まで進むと振り飛車の駒が捌け、さすが藤井四段と思っていた。
少なくとも振り飛車が悪いと言うことはないのではないか。左桂で銀桂交換も果たすことができた。
しかし83手目☗3七同角の局面になると振り飛車が苦しいように思えてきた。
振り飛車の角が負担になっているということだろうか。藤井四段の何が悪かったのだろうか。悪い手はないのではないか。ということは実は☖2五同桂のところは振り飛車が苦しいのだろうか。不思議な感覚だった。
そこからの中田六段の指し回しには、藤井ファン目線ではつらい順ではあったが、舌を巻くばかりであった。111手目☗6一銀~☗6三金という激しい寄せから、☗6四金と一瞬緩んだかと思いきや、☗4四香が激痛。強すぎる寄せだった。
評価値
ずっと難解な将棋だったが、76手目☖2五同桂の局面は先手が良かったようだ。☖3五角があまり利いておらず、むしろ目標になってしまったということか。その後難しい数値になっているところもあるが、先手玉に手が伸びておらず人間目線では相当後手が苦しいと思う。
参考文献
- 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)
棋戦情報
第19期棋王戦(主催:共同通信社と観戦記掲載の21新聞社、日本将棋連盟)