感想
順位戦連戦。宮坂八段、佐伯八段とベテランとの戦いが続く。順位戦の戦績はここまで藤井五段3連勝、佐伯八段3連敗。ベテラン対若手の構図は、若手は決して負けられないと思っているはずだが、ベテランが思いもよらぬ味を見せて勝つこともある。この構図は楽しみが多い。佐伯八段と藤井五段の対戦カードはこの1局のみしかない。
戦型は藤井四段の四間飛車に佐伯八段の5筋位取り。この時代の棋士は位を重視しており、よく位取り戦法が出てくる。好局、名局ばかりでなくその時代の生の位取りの将棋。最近では位取りの将棋はほぼ見ないため、位取りの実戦例を並べることができるだけでも『藤井猛全局集 竜王獲得まで』を買う価値がある。
藤井五段は5筋に飛車を振り直し、☖3三角の動きを自由にし、☗3七桂に☖1二香という基本的な対応を見せる。これで仕掛けが上手く行かないのか、佐伯八段は☗6八金や☗1五歩、☗2六飛などじりじり間合いを図る。
44手目☖8四歩は少し印象的で、この歩を突くのが藤井流。
つい☖8四桂の筋がなくなってしまうようなことを考えてしまうが将来的な端攻めを大きく緩和している。ただし居飛車がすぐ仕掛けられる形であるため銀冠には組みづらい。
そうして振り飛車の陣形は、5筋位取りに対して万全と言える形になった。佐伯八段は結局仕掛けることはできず☗2六飛~☗2九飛を繰り返し、千日手になった。約1年ぶりの千日手。仕掛けが起こらず千日手になったのは残念だった。
評価値
四間飛車は万全の構えと言っても互角。ここからの戦いが見たかった。
参考文献
- 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)
棋戦情報
第53期順位戦C級1組(主催:毎日新聞社、日本将棋連盟)