1995/10/27 藤井猛六段—鈴木輝彦七段(王座戦)

感想

第44期王座戦初陣。鈴木輝彦七段と戦う。鈴木七段とは過去1戦1勝。

藤井六段は四間飛車。9手目☗3八玉でいつもと違う雰囲気が出ている。藤井六段は☗3八銀が多い。鈴木七段との前局の戦いを見ると、位取りから盛り上がるような指し方をしてきた。位取りであればその圧力から遠ざかるように振り飛車穴熊を視野に入れているかもしれない。15手目☗1八香でその姿勢が明らかになった。それでも22手目、鈴木七段は☖5五歩として位取りを志向した。

24手目☖5四銀に☗4六歩は何気ないが習いある手。☖4四歩に☗4七金とできるように備えている。さらに☖6四歩☗9八香☖7三桂☗6九飛の4手一組の定跡手順も現れた。振り飛車穴熊であっても基本的な手順は変わらない。

32手目、振り飛車穴熊が未完成の内にということか、早くも☖6五歩☗同歩☖同銀と仕掛けてきた。☖3一銀型なので☗5六銀の反発は無効。☗3九金と穴熊を完成させ、☗3六歩として角の転回を見せた。

ところが40手目☖2四歩に対して突然☗3五歩!と仕掛けた。

6~8筋は後手の圧力が大きい形。そのまま自陣まで固めさせる訳にはいかない。とは言え☗3五歩は驚きで、一見後続手が無いように見える。ここからさらに☗5六歩と歩を突き捨て、53手目☗3七飛まで行けばなるほど、☗3五歩の意味も分かってきた。しかし後手の銀はさらに前進し、8筋も完全に明け渡しており、代償も大きい。この玉頭攻めがどれだけ厳しいか。

55手目☗8二歩から歩を連打し8四まで飛車を吊り上げる。☗3五飛~☗5五飛としたとき、☖同角☗同銀が飛車に当たる仕組みだ。しかし鈴木七段は堂々と☖8四同飛としたことから、その変化は怖くないと言っているようなものだ。実戦もこの変化に進み、☗5五同銀のときにひょいと☖8五飛と浮いた。

逆に銀当たりにする返し技があった。

藤井六段は積極的に動いていったが、鈴木七段の冷静な対応で後手陣への厳しい攻めがなくなったように見える。居飛車が良さそうだ。

78手目☖3二香~☖3五歩は憎いほど慎重な手順。☖3二香は3八の金取りであったが、その利きを止めてでも角の活用を封じた。さらに92手目☖8二歩。

今度は馬も封じた。

2枚の大駒を封じられる冷静な指し回しで逆転が難しい将棋になった。104手で藤井六段投了。

評価値

評価値(YaneuraOu(tournament128-cl4) NNUE 20240528/tanuki-wcsc34/1手15秒)

評価値的には☗3七飛の局面はやや後手に振れていた。居飛車の最も薄いところを攻め、飛車も参加させることができたが、8筋から飛車先を突破される攻めより厳しい攻めとはならなかった。藤井六段の積極的な攻めが面白かったが、鈴木七段の冷静な指し回しが光った将棋だった。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第44期王座戦二次予選(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)