1992/4/17 藤井猛四段—所司和晴五段(棋聖戦)

感想

所司和晴五段との一戦。私は所司五段の『駒落ち定跡』で駒落ちを勉強した身。この本で一通り駒落ち定跡に触れることができて大変感謝している。

本局は藤井四段の第61期棋聖戦初戦。戦型は藤井四段の四間飛車に所司五段の天守閣美濃となった。

☗6七銀型の隙を突いて☖4二銀~☖3三銀と4枚美濃に組まれた。結構悔しい手順だが、その後☖4三金が入る前に☗4五歩とちょっかいを出すことができて、本局ではそんなに悔しくないように感じる。ただ、その後☗6四歩~☗6五歩と振り飛車から継ぎ歩したのが珍しい。

☖6五同歩なら☗2五歩☖同歩☗6五飛☖6四歩☗2四歩☖同玉☗2五飛という狙いだろうか。振り飛車からの継ぎ歩は大抵重く、あまり上手く行くイメージがないが本局はどうか。所司五段は継ぎ歩瞬間に当然反撃してきた。

少し進んで角銀交換の駒割りだが先手にと金ができている。これなら継ぎ歩が成功していると言えるのではないか。その後☖6二歩に☗4二歩が鋭い一手。

後手玉は☖3三銀が居なくなって薄くなっていたが、金もどんどん離れていくことになった。一方先手玉は一時ダイヤモンド美濃になるなど非常に堅い。先手がリードを奪っているように見えた。

そして69手目☗2五歩。いよいよ出た。藤井四段のこの歩突きを見ると盛り上がる。玉を釣り上げて☗5二飛~☗5一飛成が細かい手順で角を使わせた。ただ☖4三角はこっそり2五の地点にも利いている。銀冠ではなく☗2八玉型の美濃囲いなので先手も怖いところがあるが、81手目☗4六歩はそうした不安を最大限に緩和する手で参考になった。

☖3五歩に対しても☗4八桂がぴったりの受けで、玉を釣り上げた効果が出ている。玉頭に先手の駒が多い訳では無いが、後手は玉が戦場に近い分カウンターを受けやすい。この薄い美濃囲いに手を出せない雰囲気すら感じる。玉頭周りの藤井四段の指し回しは精緻を極めていた。

最後の寄せも☗4二銀の好手が出て、序盤から終盤まで藤井四段の良いところがたっぷり出た。藤井ファンにはたまらない一局だ。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

右肩上がりの快勝譜。お見事。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第61期棋聖戦一次予選(主催:産経新聞社、日本将棋連盟)