1991/11/29 真田圭一三段—藤井猛四段(新人王戦)

感想

藤井猛全局集 竜王獲得まで』では真田三段とは2局目の将棋。

前局は銀冠穴熊対銀冠という持久戦だったが、本局は藤井四段の後手四間飛車に真田三段は右銀急戦を仕掛けた。☖4三銀型に舟囲い~右銀急戦という極めてシンプルな仕掛けで、アマチュアでも良く出てくる形だ。

1991年はまだ☖4三角の藤井新手も小阪流も無い時代。『藤井猛全局集 竜王獲得まで』は、藤井先生によって、あるいはその時代の棋士によって、まさに現代的な定跡が創られていく過程が分かる歴史書でもある。本局、☗3四歩(37手目)に対する藤井四段の指し手は☖3九飛だった。

☖6二銀(50手目)と埋めたところは舟囲いの先手玉をどのように攻略するのか見えず、今の目で見れば先手が作戦勝ちに見える。ただし、先手は歩切れというのが後手の主張だと思う。歩切れが主張のため☖4六歩の突き捨てもやりづらいが、本譜を見ていると先手からの攻めも難しいようだ。☗4一竜(69手目)に☖3五角で、先手玉の急所に対して駒が利き始めた。☗6八金と固めた手がかえって角に狙われており、中盤は先手が有効な手を指せていない印象だ。この辺りで後手がやれるようになったきたように思う。

☗9五歩(71手目)は歩切れの状態での端攻めで意表をつく。勝負しに来た感じだ。続いて☗6六角とあくまで端を狙っている。それに対して☖7四桂が見事な切り返しだった。

☗4四角で銀を損するが、☗4四同竜と利かないところに竜を追いやり、☖9六香が極めて味が良い反撃となった。先手の歩切れを突いており、先手の端攻めも逆用し、さらに☗6八金と寄った手も逆用している。この後出てくる☖6五桂(86手目)も☗7七金を逆用した手だ。

本局の藤井四段は中盤以降、真田三段の指し手を悪手にするような、相手を全否定するような恐ろしさを感じた。最終手☖5七金もかっこいい。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手20秒)

☗3三歩成(41手目)のところは意外にも☖5七桂で後手有利という(☗同金なら☖2八竜が王手飛車)。ただ、現代では☖3九飛が指されないことを思うと先手は☗3七飛よりもっと良い手があるということになるが、私はそれを知らない。本譜は互角の進行だ。逆に☖9六香(78手目)もその瞬間はまだ数値上後手が良い訳では無かったが、次の手で後手に振れており、対局者心理としても後手が良くなったように思っていたのではないだろうか。後手が良くなってからはあっという間だった。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第23期新人王戦本戦(主催:赤旗、日本将棋連盟)