1992/1/10 藤井猛四段—富沢幹雄八段(竜王戦)

感想

富沢幹雄八段と2回目の対戦。前回、富沢キックを喰らって負けてしまったのでリベンジ戦となる。

本局は相矢倉となった。富沢八段が後手番ながら早々に☖8四銀と棒銀にして好戦的な作戦を示した一方、藤井四段も早めに金矢倉を構築してすぐ潰れないようにしっかり構えた。

☗4六角(23手目)が機敏に見える。☖6三金を強要して後手陣がバラバラになった。

その勢いでさらに☖5四金と角頭を狙ってきたが、敢えて☗3六歩と突き、☖4五金は怖くないと言った。その後のやり取りでじっと自陣に加えた手は、後手のどんな手よりも価値が高いように感じた。先手への攻めが難しい。難しいということは棒銀を無効化できているということで、先手が上手く立ち回った序盤だった。

☗6四歩や☗2二歩と小技を利かせたのが、相居飛車でもさすがの上手さ。そして☗3七桂が絶品の味。

藤井四段の味良い手が続いていたが、そこで突然☖8七銀!と強烈な勝負手が飛んできた。富沢八段も黙っているだけでは無かった。

多く時間を残していた藤井四段は40分考えて☗6六銀と対応し、富沢八段の勝負手を切り抜けた。さらにこの銀は☗5五銀の活用を見込んでいたのが想像以上の構想だった。単に勝負手に対応しただけではなく、寄せも見据えていた。

☗2二歩を利かせたのお陰で寄せは4三や5三の地点が急所となっており、この地点を巡るガジガジ流の攻めが発生した。左銀まで活用してこのガジガジ攻めを通し、結局☗5三角成を実現させて寄り形となった。最終手☗3一金がカッコ良い。

またも夕休前の終局。富沢八段の棒銀を完全に無効化し、後手陣の形を乱しながら優位を拡大し、勝負手にも動じずしっかり寄せた。藤井四段が好局を見せ、見事にリベンジを果たした格好となった。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

一度も後手に振れることなく勝ち切った藤井四段の完勝譜。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第5期竜王戦ランキング戦6組(主催:読売新聞社、日本将棋連盟)