1989/6/14 藤井猛初段—石堀浩二初段(若駒戦)

感想

藤井猛全局集 竜王獲得まで』には、藤井猛九段がプロ(四段)になる前の棋譜もいくつか収録されている。記念すべき収録第1局は「藤井猛初段」の将棋。貴重な1980年代の藤井先生の将棋だ。

奨励会時代の主流戦法だったという藤井初段の中飛車。序盤、千日手模様となり先手の藤井初段としては少し不本意だったのではないだろうか。☗2五歩型の主張はあったが、仕掛けて行けない上細かい手待ちの間に4枚穴熊に組まれてしまった。中盤、藤井初段も穴熊にして開戦した辺りは左桂を☗2五まで使って会心の捌きに見えたが、直後の☖8三飛が冷静な切り返しだった。手待ちの間に上がった☗9八香を都合よく取られ、☖5一香~☖5六歩のカウンターが相対的に玉の薄い先手玉にヒットしたように思う。序盤から常に藤井初段の方が苦しそうな印象だった。終盤は端から猛攻を見せたが足りず、残念ながら収録第1局は敗戦譜であった。

普段藤井将棋を見ていると、相穴熊でもないのにここまでしっかり穴熊に組まれることは無いので、改めて穴熊に組ませてはならないと感じた一局だった。先手ながら後手に回ったような感じでもあり、今の藤井先生ならもっと主導権を取りに行くような将棋にするはずだ。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.1/1手20秒)

藤井初段が捌きに行った辺りはもっと後手が良いと思っていたが、評価値上互角だった。ただやはり玉型の差で先手が良くしに行くのは難しいのではないかと思う。☖5一香~☖5六歩のあたりから評価値が後手に振れていったので、並べた時の印象と評価値はあまり乖離していないようだった。終盤若干盛り返しているところもあるが、石堀初段に見切られているようで逆転ムードはあまり感じなかった。ただ、苦しい中で、藤井初段は4枚穴熊に対して一番厳しい攻めを敢行したということだと思うので、攻め筋としては参考になる。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第12回若駒戦(主催:大阪新聞)