1992/5/6 藤井猛四段—櫛田陽一四段(銀河戦)

感想

櫛田陽一四段との一戦。

櫛田四段は「世紀末四間飛車」を生み出した四間飛車党。本局も櫛田四段の四間飛車に藤井四段の居飛車穴熊になった。

先手の飛車先が伸び切っていないのを見て、穴熊に組む途中で振り飛車から角交換を挑む積極策を採用。☖3三桂の形で飛車先交換が受からない形だが、左金でカバーしようとしている。左銀を美濃囲いにくっつけたことで、櫛田四段が立石流の形にしようとしているのが分かった。

それに対する藤井四段の構想が秀逸だった。7筋の歩をずんずん突いていき、単騎の歩が美濃囲いを襲った。この歩が取れない。さらに7筋に飛車銀が集まり、いきなり玉頭攻めが実現した。既に立石流の飛車を捌く時代ではなくなった。

以降は小駒で着実に迫り、一手差を見切った寄せを見せた。居飛車穴熊とは言え、本局の藤井四段の金は一度も動かなかった。それだけ速攻で美濃囲いを攻略し、攻め続けたということだ。立石流に組み上げる途中の弱点を機敏に突いた、藤井四段の見事な将棋だった。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

藤井四段の短手数快勝譜。一手差とは言え一方的に攻め倒した将棋。藤井四段側をもって気持ち良い将棋だった。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第2期銀河戦予選(主催:サテライトカルチャージャパン)