1992/11/6 藤井猛四段—豊川孝弘四段(順位戦)

感想

豊川孝弘四段との一戦。豊川四段は藤井四段よりも後に四段昇段しており、席次では藤井四段が上座での対局となったはずだ。ここまでの順位戦成績は藤井四段が4勝1敗、豊川五段が5勝0敗。勝負所だ。

戦型は藤井四段の四間飛車に豊川四段の天守閣美濃。この形は四間飛車が後手玉を角の睨みで牽制し続けるが、本局は豊川四段が☖5五角から角を転換し、後手からも先手玉に角の睨みを利かすのが豊川四段の工夫だった。

中盤に入ったところで、☗9七桂が意表の手。

☖6四歩としたところで跳ねたのが上手く、下手をすると☗6四歩と取り込む筋が生じており、後手が動きづらい。この後難なく☗8五桂と跳ねることができ、後手は☖8一桂が使えなくなった。この辺り長考の応酬だったが、最後は☗6四歩☖6二歩が入り、藤井四段が大きすぎるポイントを挙げた。ここからの逆転は無いだろうと思わせるほど形勢に差がついたように思う。6筋反発の形に関する藤井四段の対応はいつも素晴らしいものがある。

57手目☗7三歩も、当然の手ながら参考になった。私のようなアマチュアはつい☗8三角と打ってしまい、もったいない角の使い方をしがちだ。

ここから豊川四段は懸命に小技を駆使し、と金を作ってきた。これに対し藤井四段は、飛車を成り込むのではなく、守備駒として残し、☗7三歩から作ったと金も含めて小駒で攻めて行ったのが素晴らしかった。お互いの玉に対する距離感をつかんでいる。飛車がいることにより逆転する可能性はなお低くなった。

本局は6筋の攻防の結果が一局の命運を握った印象だった。そのキーとなる☗9七桂は藤井四段の名手。藤井四段の快勝譜となった。これで藤井四段は5勝1敗。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

綺麗な右肩上がりのグラフと思ったら、83手目☗4二銀と引っ掛けたところは若干難しくなっていたという。89手目☗6六角に☖5五歩という手があり、☗5七角なら☖4四桂が確かにいやらしい。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第51期順位戦C級2組(主催:毎日新聞社、日本将棋連盟)