1993/9/13 勝浦修九段—藤井猛四段(王位戦)

感想

勝浦修九段との戦い。勝浦九段とは1991年度にも対戦しており、お互いがっちり銀冠に組み合う将棋で負けている。

本局も勝浦九段は16手目☖5三銀右と持久戦調の構え。藤井四段は四間飛車であったが、そこで☗7五歩と三間飛車への変化を示した。

☖8四歩と突いていないため☗7八飛~☗7六飛が間に合うし、前回の対戦のような右四間飛車を牽制した意味があると思う。本譜は石田流に組み換えることができ、今回はがっぷり四つではなく、藤井四段が軽快に捌いていく将棋を目指した。

対して勝浦九段は☖6三金と逆方向に金を上がった。捌きを封じるだけでなく押さえ込んでいくようなプレッシャーを感じる。藤井四段は☗9七角~☗8六飛として7筋からの圧力を避けつつ☖8三歩を打たせることができたが、☗9七角が使いづらく☗8六飛も動きづらそうだ。後手の作戦勝ちになっているだろうか。

そこでじっと☗6八金~☗5八金寄は渋いが、その間に指された☖7三桂~☖3一角はいかにも攻めのポテンシャルが上がっている。55手目☗5六歩から反発したが、☖6五歩のカウンターが強烈だった。

先手が軽く捌いていく将棋を目指したはずだったが、後手の方がうまく捌いた形。先手も角が捌けたと言えるが、後手の方が角の使いどころが多い。さらに反発した☗5六歩も取り込まれて大きな拠点になってしまった。

74手目☖6六角~☖9九角成~☖5五馬は駒得しながら馬を天王山に運ぶ気持ちの良い駒の活用。勝浦九段が分かりやすく優位を拡大した。藤井四段は☗6三歩成とと金を作ったが、この馬を消すために☗6四角と合わせるしかなく、☖6二金を取れずにと金を引くことになった。それでもこのと金の存在は先手の大きな主張点であることには違いないはずだったが、5七の地点をあっさり清算し、☖7五角が金とと金の両取り。厳しい決め手があった。

勝浦九段がまた強い将棋を見せてくれた。藤井四段が負けるのは残念ではあるが、中堅以上のベテラン棋士が有望な若手相手に強い将棋を見せるというのも楽しいものがある。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

大きく評価値が変動するような局面は無く、じわりじわりと後手に振れている。☗6八金~☗5八金寄など藤井四段も崩れない手を指していたということだと思うが、それにしても勝浦九段の指し回しが見事だった。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第35期王位戦予選(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)