1992/7/17 佐藤大五郎九段—藤井猛四段(全日プロ)

感想

佐藤大五郎九段とは2戦目。前局は藤井四段が天守閣美濃から快勝した。

本局も佐藤九段の四間飛車に藤井四段の天守閣美濃という戦型になった。手順だけ見ると全局と似ているが、佐藤九段が☗5六歩と突いていないだけで全然違う雰囲気だ。そして☗4五歩と位を取っていった。前局より現代的な駒組になっている印象だ。

この戦型は4筋の位を巡る攻防がしばしば現れるが、本局は6筋を巡る攻防も加わり複雑な中盤に入った。藤井四段が6筋から反発して☖7三の位置に角を据えたのはシンプルながら上手いと思った。いかにも好位置。佐藤五段は4筋の位を放棄する代わりに6筋の前線に銀を送り出し、この好角を抑え込む方針に切り替えた。

☗6四の垂れ歩も不気味で後手は飛車を動かしづらい。61手目☗8六歩は先手からの待望の手に見えたが、☖9五角の切り返しが素晴らしい。☗9六歩には☖8六角☗8七歩☖6四角☗同銀☖同飛で角銀交換になるが歩切れの先手がつらそうだ。続いて☖6六歩も見事だった。☖7三桂の筋が厳しくなっている。結局抑え込みを狙われた角は相手の角と交換になり、無傷で捌けた格好になった。☖9五角~☖6六歩は藤井四段会心の手順だと思う。

ここからの勝ち方も圧巻。85手目☗3五桂にさっぱり清算し、先手の馬が玉頭に来させてしまって不思議だったが玉頭をケアして☖7九角としたのを見てなるほどと思った。手持ちにした角と4筋の位を存分に活かしている。そして☖4六歩~☖4四金~☖4五金と金も前線に繰り出し、新たな拠点が生まれた。天守閣美濃側から分厚い玉頭攻めが展開された。いつの間にか☗6四銀が取り残されており、まったく緩みなく決め切った将棋だった。またしても藤井四段の好局。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

藤井四段の快勝譜だと思ったが、角を取り合って☖3三桂と跳ねたところは意外にも先手に振れていた。☖3三桂に☗5六銀と捨てる勝負手があるのが理由なようで、と金を作って☖6四とと引けば金が取れる上に飛車が捌けそうだ。とは局面の流れはやはりずっと後手だったと思う。☖9五角~☖6六歩の順や、終盤の攻め倒し方なんかは何度も並べたい。

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第11回全日本プロトーナメント(主催:朝日新聞社)