1992/9/11 所司和晴五段—藤井猛四段(王座戦) ※千日手局

感想

所司和晴五段との一戦。約5か月ぶり、2度目の対戦となる。

戦型は所司五段の天守閣美濃に、藤井四段が高橋道雄九段戦(1992/7/31・王将戦)以来、2度目の「対左美濃藤井システム」を発動した。

美しい。

所司五段は☗9八玉から米長玉銀冠に組み替えた。そして藤井四段は、高橋九段戦とはまた違う、☖5四銀~☖6三銀引というダイヤモンド美濃に囲ってから5筋を狙う指し方を披露した。

☖5四歩型も☖5四銀型も『藤井システム』(毎日コミュニケーションズ)に解説があり、どちらも有力だが☖5四銀~☖6三銀引の構えの方が「柔軟性に富み、安定感ある指し方でお勧めできる」とされている。いずれにしろ、急所は5筋の歩交換にある。

その歩交換を目指す☖5五歩に、所司五段は☗5七金と対抗した。米長玉銀冠と言い、この☗5七金と言い、所司五段の対応方針には高橋九段藤井四段戦が下地にあるような気がする。

☗5七金は☗7九角の働きが弱くなるため実戦的で、こういう手はあまり深く研究されないのではないかと思う。藤井四段もここで腰を落として今後の方針を考えたか、62分の長考で☖6四銀とした。5五に争点を残したまま、より厚い形を築いた。

そこから程なくして千日手になった。先手番としては仕方ないような手順であり、後手番として不満の無い千日手だと思う。ただ、今ではこの「対左美濃藤井システム」の優秀性を知ってしまっているので、並べていると「早く勝利という結果に繋がって欲しい」とつい願ってしまう。

評価値

評価値(Suisho5(20211123)-YaneuraOu-v7.6.3/1手15秒)

参考文献

  1. 藤井猛著『藤井猛全局集 竜王獲得まで』(日本将棋連盟発行/マイナビ出版販売)

棋戦情報

第41期王座戦一次予選(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)